霊界幼稚園はてんてこまい｜リアクション

霊界幼稚園はてんてこまい

◆あやかしとの接し方

　稲積柚春とウォルター・Bはいつのまにか霊界の幼稚園に迷い込んでいた。見慣れない場所だったものの、２人は以前保育園の交流会で子供たちの面倒を見たことがある。だからここの先生と思われる眼鏡の女性が助けを求めたとき、二つ返事で頷いた。案内された園内では子供たちが元気にはしゃいでいる。

（あのとき担当したのは乳児クラス。今回はもう少し大きな……ちょっと変わった子供みたい？）

　あやかしの子供たちは皆それぞれの個性が際立っている。捉え方によっては恐ろしく思えるかもしれない。実際、２人はホラーが苦手だった。しかし園児たちの可愛さを前にして、その個性をすっと受け入れた。

「みんな、今日は一日よろしくね！」

　柚春自身が霊界やあやかしの存在をはっきりと理解していないことも幸いした。彼女は積極的に子供たちと関わろうと輪のなかに入っていく。どんな遊びが流行っているのか教えてもらったり、お弁当にどんなおかずが入っていたら嬉しいか聞いてみる。なかには聞いたことがないおかずもあったけど、それを楽しみにする気持ちは共感できた。

「お弁当の時間が楽しみだね」
「うん！」

　そうして色んな子たちと様々なことを話す。
　柚春もウォルターも引越しが多かったから、その場その場で輪に溶け込むのは得意なほうだと思っている。だんだんと園児たちにも受け入れられて、楽しい時間が過ぎていく。

（いつか、こんなふうにワットと……）

　子供たちに囲まれながら、柚春は将来の自分を思い描く。しかしここはあやかしの子供たちが集まる幼稚園。当然のように柚春たちにとって不可思議な現象が起こる。はじめは舞台装置のようなものが作動したかと思ったが、どうやら園児自身が発生源らしい。

「……え、その力が使えるの？」

　柚春はとっさにウォルターの腕に抱き着く。

「す、すごいね！　僕らには使えない力だよ！」
「そうだね……」

　少し様子をみる２人。
　目の前で実際に起こると、柚春も流石に『本物』だと理解してしまう。けれど彼女たちはちゃんと子供たちを見た。

「人間のことを教えてあげようか？」

　あやかしにとっては日常でも、人間からするとそうではない。あくまで子供たちの気持ちに重きを置きつつ、あやかしの力が人間だと驚いてしまうことや加減の大切さを伝えた。

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