双界の決戦　――界喰らいのグラトニエル――｜リアクション

双界の決戦　――界喰らいのグラトニエル――

「私も、しっかり張り付いてがんばるんだから！」
　白真白が武器を手に頼もしさをにじませる笑みを見せる。今回はメンバーを見た限り治癒士が夏朝しかいない。重戦士としてやれることは最大限やろう、と覚悟をきめたようだ。
「グラトニエル……。倒して、出来る事なら心を満たして、終わらせたいねぇ」
　そう言ったのは猫の着ぐるみ姿の曖浜瑠樹。彼はピコピコハンマーを手にふわりとした笑顔をみせる。本当は先ほどまで表情を曇らせていたが、戦いは笑顔でがんばろうと決めた模様。
（１２人か……）
　蒼留人は集まった人数にほんのりと不安を覚えた。けれども、皆の顔には戦う意思だけが滲んでいる。彼はぱんぱんっ、と頬を叩くと前向いた。

（問題は人数じゃない。何を成すか、だよな！）

/) /)
( ^ㅅ^)＜そのとおりだよ。

　ウサギさんがぽむっ、と蒼留人の肩を叩き頷けば集まった仲間達もまた思いは同じとばかりに頷き返す。
「そうそう！　ちょっと話を聞いて欲しいな」
　都が声をかけ、一同に話しかける。彼女は前回の調査で複数の武具を隠していたのだ。
（マップギミック、チュートリアルかNPCの掛け声でもないと気付かんもんね。……まぁ、うちはNPCじゃないですけど）
　都は内心で苦笑しつつも、仲間達に説明する。
「その武器を使って攻撃も出来るなら、心強いかもねぇ」
「このレンガの建物も一応戦場だろうし……、十分いける」
　瑠樹と碧南はちらりとレンガ造りの建物を見、頷き合う。冒険者達は士気が高まりつつも気を引き締めて辺りを伺う。
　と、その時……ガラスが割れるような音がそれに響いた。
「！　あれを見て！！」
　碧南が指をさした先、光の壁が、ガラスのように割れ、幾つもの光が飛び散った。そして、割れ目から黒い靄が迫るのが見えた。それから浮かびあがった美女は冒険者達を見、にっこり微笑む。
『ここを突破すれば、混霊界を完全に食べられそうね？』
「グラトニエル……っ！」
　露草の声が僅かに怒りで震える。夏夜と真白が彼の傍に行き身構えればグラトニエルはうっとりとした顔で冒険者達の前へと姿を現した。
『大人しく食べられればいいのにね？　貴方たちだって、現実世界に帰れなくなるかもしれないのに』
「そうはいかないよ！」
「絶対に勝つと決めたんだ！」
　真白と夏夜が勇ましく言い切れば、グラトニエルがその髪を、胸を揺らして笑みを強くする。
『今まで食べてきた世界の戦士たちも、そう言っていたわ。でも、すぐに悲鳴を上げて逃げて……、最後にはみぃんな泣きながら食べられていったわ』
「ここに居るみんなは、誰一人逃げないよ」
「ここでお前を討つと決めたんだから」
　都の言葉に夏朝が頷いて言葉を続ければ、よりそったスピカと凜太郎もまたグラトニエルを睨みつける。
「そう……。終わらせる……すべてを……」
「その為に、ここで待っていたんだ」
　だから討たれろ、グラトニエル。……と、１２人が意識を刃へと変え、グラトニエルへと向き直る。彼女はんふふ、と艶っぽい笑みで両腕を広げた。途端に広がる黒い靄！　グラトニエルは狂気に満ちた笑顔で身を翻す。
『いいわ、いいわ、いいわ……！　その顔を絶望で歪ませてから食べてあげる！！』
　一気に殺気が膨れ上がる。冒険者達は武器を手にグラトニエルへと向かった――！

「……時間は稼ぎましたよ」
「どうか……世界を……」
　極天使たちと魔侯爵たちの祈りは、冒険者達に届くのだろうか？

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