煌めきの星に願うこと｜リアクション

煌めきの星に願うこと

　満点の星空の下、人々は空を見上げる。
　あの星が綺麗だとか、あっちの星が綺麗だとか、いろいろな人が星空を眺めている。
　『煌めきの星』。それを見るために、寝子島の人々は九夜山に集まっていた。

「綺麗だねぇ～……」

　そんな中、高梨彩葉と志波拓郎は共に星空を眺めていた。
　貸し出されている天体望遠鏡やブランケットをせっせと借りて、どこかいい場所はないかと探しつつも頂上の道をてくてくと歩いていく。
　時々立ち止まっては空を見上げ、洪水とも言えるようなたくさんの星の輝きを楽しんでいた。

　人によっては星座をも見つけることが出来るだろうけれど、知識がないことにはどの星を結べばどんな星座が作れるかはよくわからないもの。
　けれど、こうして２人で一緒に見るということが一番の楽しみ方であり、星座が見つかるかどうかは特に問題ではない。楽しければそれで良いのだ。

「あっ、煌めきの星！」
「えっ、何処……あ、あれか！」

　彩葉が指差した先に、ひときわ輝く星が見えた。
　人によって見える色が違うという煌めきの星。噂では見えた色によって叶う願いが違うとのことらしいが、真相は定かではない。
　けれど２人は構わず、願いを込めた。噂なので実際に叶うかどうかはわからないが、それでもそんな噂があるのなら願わずにはいられないもので。

「拓郎はどんなお願いをしたの？」
「俺は、怪我なく過ごせる、ように……かな。彩葉さんを、心配させたくないし……ね」

　ゆっくりと微笑んで、もう一度空を見上げた拓郎。
　彼の煌めきの星は赤い色。健康やスポーツに関する願いが叶うと言われる色が見えていたようで、これから大学でより競技に打ち込むことを考えて『怪我なく過ごす』という願いを込めたようだ。

　そんな彼の優しさに小さく微笑んだ彩葉。拓郎にどんな願いをしたのかを問われて、ニコニコ笑顔になって彼女は答えた。

「私はね、商売繁盛をお願いしたんだー。将来お店を持った時に、ね！」
「なるほど……」

　彼女の煌めきの星は黄色。お金や商売に関する願いが叶うと言われる色が見えていた彩葉は高校を卒業したら故郷の製菓の専門学校に通う準備をしており、そこも卒業したら店を持ちたい！　と考えていた。
　だがそれが成功するかどうかは、神のみぞ知る。故に彼女はここで商売繁盛を願い、未来の自分が良い成長をしてますように！　と願いを込めていたのだ。

「やっぱり、見えてる色……違うんだね」
「みたい？　拓郎は赤で、私は黄色だもんねー」

　人によって見えている色が違うという話は本当だった。それに感銘を受けつつも、そろそろお菓子タイムに入ろうかとあたりをきょろきょろ見渡す。
　既に色んな人が場所取りをしているせいか、空いている場所が少ない。しかしこのまま立ちっぱなしも難しいだろうし、どうしたものかと考えていた。

「……よし、じゃあ……」

　大きな岩に座った拓郎。そっと彩葉を自分の膝の上に座らせて、特等席を作り上げる。
　まだほんのりと寒さの残る風が２人を吹き付けるが、借りてきたブランケットを一緒に膝にかぶせて、彩葉が持ってきた温かいコーヒーを一緒に飲んでいた。

「そして、じゃーん！」

　彩葉はそのまま、自分が作ったお菓子を見せびらかした。
　彩り鮮やかなココアカップケーキと惑星に似せたチョコレート。その２つがお目見えする。

「えっ、これ……どうやって、作ったの？？」
「ふふふ、ひみつー。おいしいかにゃ？」

　美味しいか、と聞かれた拓郎は口の中に広がるカカオの香りを堪能して、首を縦に振ってしっかりと答えた。

　もちろん、美味しいよ、と。

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