あなたにプレゼント！｜リアクション

あなたにプレゼント！

☆クリスマスの思い出

　その日稲積柚春は、そわそわしていた。
　手作りのサシェ（香り袋）と手作りのお菓子を用意すると、ウォルター・Bの家へ向かった。

「やあ、どうしたんだい？」
　出迎えたウォルターに笑顔を向け、サシェとお菓子の袋を渡す。
「今日はなんだかプレゼントをしたい日だなあ、と思って。はい、どうぞ」
　受け取りながらウォルターは答えた。
「おやおや。クリスマスでもないのに？」
「クリスマスと言えば……そうだ、あの時のプレゼント、使ってくれてる？」

　それは、クリスマスにワットの時間を分けてもらった時のこと。
　クリスマスマーケットの洞窟で待っていた柚春の元へ、ワットは駆けつけてくれた。
「来てくれてありがとう。メリークリスマス、ワット☆」
　差し出したプレゼントは、カフスボタンとタイピンのセットだった。
それぞれ、シンプルなラインと小さな青いストーンがついている。
「僕に？　ありがとう」
「僕の気持ちをたくさん込めたよ」
　タイピンの裏には「I need to cuddle with you」。
　そしてカフスボタンの裏には「Embrace」と、とても小さくメッセージが刻まれている。
（イギリスでは逸話があるらしいし、意味は通じるかな？）
『私を抱きしめて』
　かつてイギリス国王と恋に落ちた女性が、ニャルティエに依頼したカフスボタンに刻まれていた文字だ。
（これからも、ずっとずーっと一緒にいようね）
　そんな気持ちを込めて。

「それじゃ、お返しをしなくちゃねぇ」
　ワットはクリスマスマーケットで見つけた腕時計を柚春に贈ってくれた。
　腕時計のベルトは、ウォルターの瞳の色だった。
「ありがとうワット！　大切にするね」

　ソファで話しながら、あの時のことを思い出す二人。　
「……ああ、ここぞというときに使ってるよぉ」
「よかった。……そういえば、クリスマスの次の日には、ボクシングデーでメアリさんをおもてなししたよね。誕生日も喜んでもらえたし、いつものお返しができているといいな」
　などと話していると。
「いつもありがとうございます、柚春さま」
　当のメアリ・エヴァンズが現れた。
「私も今日はなんだかプレゼントをしたくて。つまらないものですけど」
「ええっ？　いいんですか？」
　包みを開けると、ハンドタオルが入っていた。
　かわいらしい青い鳥が詩集されているデザインだ。
「ありがとうございます！　嬉しいです！　これからも、メアリさんみたいに素敵な人になれるよう頑張りますね」
　心からの感謝と共に、柚春は伝えるのだった。

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