レッツ陶芸チャレンジ！｜リアクション

レッツ陶芸チャレンジ！

◆茶碗と灰皿

　水槻清恋は警察の独身寮で目を覚ました。
　一瞬寝坊したかと焦ったが、今日が非番だったことを思い出し安堵する。体を起こして煙草を吸おうと手を伸ばしたが、いつも置いてあるはずの場所にない。

（そういや煙草切らしてたっけ）

　仕方ないので身支度を軽く整えて商店街のほうへ向かう。仕事や学校へ行く人たちとすれ違いながらコンビニに入る。目当ての煙草を買おうとレジに行くと、陶芸体験会のチラシが置かれていた。煙草の会計を済ませたついでに１枚もらっていく。

（陶芸ねえ……）

　朝起きて寮を出たものの、煙草を買う以外に目的がない。暇つぶしにはなるだろうと思いながら、チラシに書かれた会場を目指す。工房に到着すると他にも参加者が集まっていた。予約制なら諦めるつもりだったが、飛び入りでも大丈夫だったようだ。
　全員揃ったところでスタッフが道具や材料について一通り丁寧に説明する。話が終わるとそれぞれの作業スペースに移動した。

（何を作ろうかな）

　清恋は手始めに茶碗を作ってみようと思った。ろくろを回して形を整えるわけだが、これが結構難しい。スタッフの手を借りて、何度か失敗しつつもどうにか茶碗っぽくなった。

（初めてにしてはこんなものかな）

　ひとまず完成して一安心。そして次に作ってみようと思ったのは灰皿。彼女はヘビースモーカー。灰皿は煙草を吸う人間にとっては欠かせないマストアイテムだ。これもやはりスタッフに手助けしてもらいつつ、なんとか形になった。土の塊だったものがそれなりに灰皿っぽく見えるようになるから不思議だ。
　ここからの焼く工程はスタッフが全て行うので、清恋は出来上がるのを見守っていた。いざ焼きあがってみると、しっかりと茶碗と灰皿になっていた。せっかくなのでそれらに絵を入れてみる。

（絵心とかあまりないけど）

　不安がないといえば嘘になるが、それでも描いていくうちに色々なことを思いつく。そうしてできあがった完成品はそれなりの出来だった。

（流石に初めての陶芸ですごいものは作れないよね）

　けれど茶碗と灰皿にちゃんとなっただけでも十分かもしれない。

（なんだかんだ楽しかったかも）

　清恋はそれらに愛着が沸いてきたので、持ち帰ったら使うことにした。

このページにイラストを設定する