【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪｜リアクション

【卒業生を送る会】未来へ向かってバイバイバイ♪

☆終わりかけの時間

（あおいさんをダンスに誘いたい）
　彰尋の気持ちに迷いはありませんでした。
　しかしタイミングが悪いことに、ダンスの曲が流だしたのは先生との話の最中でした。
　さすがに中途で切り上げるわけにもいかず、話が終わってあおいを探した時には、すでに他の相手と踊っている最中でした。
（一番に、じゃなくてもいいんだ）
　あおいが誘われるのはわかりきったことでした。
　むしろ終わりかけを感じる時間のほうが、印象に残るかもしれません。
　そのうちに照明が暗くなりチークタイムが始まってしまって、さすがにためらいを感じてしまったりして。
　
　やきもきしているうちに、照明が明るくなり、曲はまたワルツに戻りました。
　チークタイムに誰とも踊っていなかったあおいの横顔に、ほんの少しの寂しさをにじんでいる気がしました。
（今しかない）
　彰尋は、あおいのもとへ進み出ました。
「彰尋くん」
　笑顔になったあおいに、一礼して手を差し出しました。
「踊りませんか」
「はい」
　あおいはにっこりして、自然に手を取ってくれました。

　あおいとのダンスは何度目になるでしょうか。
（初めての頃は手汗が気になるくらい緊張したっけ）
　そこから友人に習って自信をつけて、今はこうして堂々と誘えるくらいにはなれました。
　けれど舞台の上ならできるはずの平静を装う演技が、どうしてもできないくらい頬に熱が集まってしまうのでした。

「色んな人と話せた？」
　踊りながら彰尋は軽く話をふりました。
「うん。先生に挨拶したりとかしてたよ。送る会の出し物、彰尋くんはどれがよかった？　私はアイ活のライブが楽しかったな」
「ああ、あれはすごかったね」

　それは、ささやかでも楽しく穏やかなひと時でした。
（大好きな君とだから、こんなにも嬉しい）
　このままずっと踊っていたかったけれど。

「彰尋くん、喉乾かない？　私はちょっと飲みたいから彰尋くんの分も取ってくるよ」　
「いや、俺が行くよ。あおいさんはここで待ってて」
　名残惜しかったけれど、彰尋はあおいの元を離れました。

　騒がしい男子たちに出くわしたりして、帰りは飲み物をこぼさないよう慎重に歩いたため、思いのほか時間がかかってしまいました。
　戻ってみればあおいの姿がなく、きょろきょろしていると。
「彰尋くんごめんね、待たせちゃった？」　
　息を切らせてあおいが走ってきました。
「大丈夫だよ。急がなくていいから」
　あおいに飲み物を手渡し、美味しそうに飲む様子を彰尋は幸せな気分で眺めるのでした。

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