【星幽塔】第三階層　ボーパル・パーティーで遊ぼうよ！｜リアクション

【星幽塔】第三階層　ボーパル・パーティーで遊ぼうよ！

＞最後まで楽しもう、ボーパル・パーティー

「楽しかったですね！」
「そう、だね」
　舞台から降り、許可が出たので衣装のまま外に出る冬華と月。二人は休憩がてら屋台を見に行くのだ。
　舞台でのことを話しながら歩くと、ふと人気の少ないスペースに。そして、丁度いい具合に流れてくる、楽し気なワルツ。ステージ上で奏でられているのだろうか？
「よかったら、踊らないか？」
　月はそっと冬華に手を差し伸べる。まさかの一言に、冬華は目を見開いた。
「……！　はいっ！！」
　優しく手を取り、ゆったりとワルツを踊る。誰もいない、二人きりのダンスホールとなったそこで、月は優しく目を細めた。
「急にどうしたんですか？」
　不思議に思いながら冬華が問えば、月は少し顔を赤くした。
「下手だけど、見てるのが冬華だけなら……いい、から」
「私だけ、ですね」
　彼女の喜びが溢れる声色に、月はこくん、と頷いて微笑んだ。

＊＊　＊　＊　＊

「こっちの焼きニンジン、案外美味いな……」
「でしょ？　こっちのフライドポテトとフライドキャロットも中々いいわよ」
　ラッセルがソースのかかった焼きニンジンを食べている傍ら、ティオレは料理を片手にビールを飲んでいた。和気藹々と食事を楽しむラッセルだったが、ふと、ある事を思い出す。
「そういや、俺たち残党が居ないか見回りしている途中じゃなかったっけ？」
「さっきスタッフが『残党０っす！』って教えてくれたのよ。だから見回りはおしまい」
　ティオレの言葉に「なるほど」と頷くラッセル。そういえば、見回りの途中ティオレにスタッフが話しかけていたが、その時教えてもらったのだろう。思い出し合点のいったラッセルはニンジン入りミートパイに手を付けた。
「アップルパイは後にして、まずはこっちかな」
　思いっきり戦い、魔風の力もつかって空腹なのだ。しっかり食べておきたいのだろう。ただでさえ男子高校生であるラッセルだ。その食べっぷりは中々良い。
「そうね、焼きニンジンまた貰ってこようかしら」
　なんて考えるティオレだった。

＊＊　＊　＊　＊

「お疲れ様、絢ちゃん」
「真優理さんも」
　元の服に着替えた絢と真優理は、ニンジンとリンゴのスムージーで乾杯していた。ステージ上でのことを思い出すと少し顔が赤くなり火照ってしまう二人だが、これもまぁ、いい思い出になるだろう。観客の反応も良かったし、何より……。
「……やっぱり、かわいいわ」
　ふと絢の横顔を見、真優理は呟く。普段の彼女は可愛らしいと感じている。でも、時折……、今回のステージ上で見せた、あの艶っぽくて大胆な姿も、真優理は気に入っているのかもしれない。そう思うと耳が赤くなるような気がした。
　一方の絢は、ニコニコと自分を見つめる真優理を不思議に思い、首を傾げる。が、さほど気にしなくなった。
（舞台の上では、恥ずかしさが落ち着いて……。思うがままに踊れた。少し、身体が軽くなったような気がしたわね）
　流石にあの衣装は恥ずかしかったが、舞台に上がったとたんそれ以上に、観客を魅了したい、と思った。そして真優理と共に素敵なショーをしたい、と。
「うまくいって、よかった」
「本当に、ね？」
　二人は笑い合い、ちょっと恥ずかしくなりながらもその時の事を話すのだった。

＊＊　＊　＊　＊

　妖精たちも、他の冒険者も、心行くまで『ボーパル・パーティー』を楽しんだようで、すれ違う誰もが楽しそうな顔をしている。
「お前さん達のお陰で、いい興行ができたぜ。次も、頼むよ！」
　イナバはにししっ、と笑い６人に星幽塔特有のニンジンの他、ニンジンの形をしたバッチをくれた。
「もし、うちの一家メンバーになりたかったらそのバッチをみせて頼めばいい。そいつは見込みのある奴にしか渡さねぇんだ」
　大事にしてくれよ、とイナバが笑い、他のスタッフたちも口々に感謝を告げる。
　こうして第三階層のとある日は賑やかにすぎていったのだった。

（終）

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

こんにちは。菊華　伴です。
『ボーパル・パーティー』、いかがだったでしょうか？
どのアクションも楽しませていただきました。

冒険者の皆さんのおかげで、興行は大盛り上がりだったそうです。
鮫の仮面をかぶった集団もこってり絞られました。当分の間は悪さできないでしょう。
機会がありましたら『ボーパル一家』も登場させたいですね。

今回は皆様に【ボーパル・パーティーはみんなで】の称号をプレゼントします。
それでは、縁がありましたら宜しくお願いします。
菊華でした。

↑ページトップに戻る