【星幽塔】第三階層　ボーパル・パーティーで遊ぼうよ！｜リアクション

【星幽塔】第三階層　ボーパル・パーティーで遊ぼうよ！

＞華やかなりや、舞兎（月と冬華編）

　舞台で一戦が交えられている頃。
「……ん？」
　冬華に着て欲しい衣装の点検を行っていた月は、時折舞台の方から聞こえる歓声に疑問を持つも、その方へ行くことは無かった。今は、衣装に不備がないか見る事の方が大事である。
　楽屋の奥には広いスペースがあり、そこで冬華がダンスの練習をしている。
　月は彼女を見ながら燕尾服を見つめる。それに懐中時計、ステッキ、シルクハット……、とどれも紳士的なアイテムばかり。
「これだと少し胸が苦しいか……。ボタンで留めず、チェーンで……」
　と手直しを手早く終えると今度はろっこん『月影の死神』を使って己の姿をした影を登場させる。
「今回は月さんの影と踊るんですね！」
「あぁ……。私は運動神経と体力がなさ過ぎて……。みんなに迷惑はかけられないから」
　月の言葉に、冬華は少し寂しそうに頷く。
　だが、時間は無い。月は影を操り、冬華の踊りに合わせて動かしはじめた。

　その外……舞台の上で今、まさにティオレとラッセルが他のスタッフと共に鮫の仮面をつけた襲撃者とドンパチ一戦を交えているとは想像すらしなかった。

　そして時間は元に戻り、舞台裏。
　会場の拍手と共にスタッフから舞台へ上がるよう指示が出る。
「いよいよ出番ですぜ！」
「行きましょう、月さん」
　スタッフに声をかけられ、冬華に手を差し伸べられた月はこくり、と頷いた。そっと冬華の手を取れば、彼女は優しく微笑む。
「この衣装、かっこいいですね！」
　冬華は、紳士的な井出達の兎となっていた。
　舞台に上がる前、二人はダンサーにレッスンを受けていた。
「意外とこれ、胸元が……」
「中々大胆な動きだなぁ……っと、冬華、恥ずかしがって縮こまってたら~~見えない、じゃない~~逆にみっともないよ」
　しっかり踊らないと、と注意する月だったが、音楽に合わせ影を動かす事が意外に難しかったらしい。意識を集中し、耳を澄まし、心の中でカウントを取りながら影を操作する。
　短時間ではあったが、なかなか様になった、と二人は思う。
「頑張ろう、冬華」
　月の言葉に、冬華は綻ぶような笑みで頷いた。

　ぱっ、と差し込む光。紳士的な井出達の兎、冬華と、少女の影。懐中時計を持った兎が走り、それを少女の影が追いかける。コミカルな音楽に合わせ踊る冬華と少女の影は、その動きで会場の人々を魅了する。
　まるで童話のような（星幽塔も十分童話のような世界だが）イメージが沸くが、やがて兎は影の少女につかまる。紳士的な兎は影の少女は手を取り、一緒にワルツを踊り始めた。
　その優雅な光景に観客達も思わず見入る。時々聞こえるバイオリンの音色がいい雰囲気を生み出し、人々は更に魅了されていた。
　最後は影と冬華そろってお辞儀。観客の反応も上々で、スタッフたちもうっとりしながら一部始終をみていたのだった。

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