【星幽塔】第三階層　ボーパル・パーティーで遊ぼうよ！｜リアクション

【星幽塔】第三階層　ボーパル・パーティーで遊ぼうよ！

「どの大道芸も凄いな……」
　そう言っていたのは、ゴシック調タキシードのバニーボーイ姿となった桜井ラッセルである。その傍ら、「そうね……」と相槌を打つはスタイリッシュなバニースーツ姿のティオレ・ユリウェイス。ふと見た感じではラッセルと大道芸に感心しているように見えるが……、彼女の脳裏には数日前の事が蘇っていた。

　――数日前
　第三階層でのちょっとした用事を済ませ、酒場で踊り子として踊りを披露していた時の事。休憩として果実のジュースを飲んでいると、『ボーパル一家』に身を置く顔見知りが声をかけてきた。
　久しぶりだったので互いの近況を話しているうちに、その兎耳の青年はこそっ、とティオレに言ったのだ。
「俺たち『ボーパル一家』を目の敵にしているゴロツキ連中が、どうやら第三階層での興行を邪魔するみたいな算段を聞いちまってな……」
　『ボーパル一家』の面々はそれなりに手練れだという。だが、観客の事を考えると心もとない、と。そんな話を聞いたティオレは一家と付かず離れずという絶妙な距離感で陰から見守るように護衛していたのだ。

（今の所、影はちらほら見えるけど、直接的な攻撃はないわね）
　ティオレは、この辺りで仕掛けてくるような気がしていた。団員達も一応警戒はしているようだが……。
　ティオレが警戒している間、事情を知らないラッセルは大道芸を見せるうさぎたちを楽しげに見ていた。
「それにしても兎の恰好をして舞台にでるって話、面白いよな。こんなかっこいい衣装も纏えたし」
　バニーは露出が多く、逆バニーとか如何わしいイメージが先行してしまいがちである。だが露出なしを希望したところ、スタイリッシュな今の衣装となった。
（没入感もばっちりだな♪　パーカーや簡易や着ぐるみはつまんないから嫌だったんだよなぁ）
　満足げに笑うラッセルだったが、ここでふと仲の良い女の子の事を思い出した。
（それにしても色んな兎がいるもんだなぁ～。……うさ耳つけたあの子がいたらぜってー可愛かっただろうな！）
　白うさぎとか似合うだろうなぁ、と自然に思い浮かべ「繕ってつけてもらえ……いや、どう切り出すんだよ」と自分に突っ込むラッセル。
　そんな彼の様子をティオレは不思議に思いつつも暖かい目で見守っていた。だが、歴戦の冒険者としての勘が彼女に戦いの予感を告げる。
（これは……敵襲が近いのかしら？）
　たしか情報によると、サメの仮面をつけた連中が襲ってくるらしい。ティオレはいつでも相手になれるよう、心を引き締めた。

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