遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆｜リアクション

遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆

「くそっ、勝手に入るわけにもいかないし……」
　ラッセルはやきもきしながら窓を見上げていたが。
　しばらくするとサンタとなまはげが窓から下りてきた。
「勝負するんだったな」
「ついてこい」　
「お、おう……」
　ラッセルは耳をすますが、子供の泣き声が聞こえてくる様子はない。
　サンタとなまはげはソリに乗り込んで浮かび上がる。
　ラッセルは再びシロフクロウになって後を追った。

　サンタたちは、ウォルター宅の庭に入り込んだ。
「にんじんにクッキー？」
　準備された品物を見て、ラッセルは首をひねっていたが。
　柚春が用意したカードを読んだブラックサンタの表情が、少し緩んだ。
「まずはトランプか。なまはげ、ババ抜きならできるか？」
「おう」
　ブラックサンタはテーブルの上でトランプを配り始めた。
　妙に素直なサンタたちにラッセルは拍子抜けする。
（もしかして必要悪としてわざとヒーローが現れるのを待ってたとか……？　それはないか）
　そしてババ抜きが始まった。
　ブラックサンタがマフィンを食べ、なまはげがおにぎりを食べる。
「おめも、け」
「え？」
　なまはげの言葉に目を白黒させるラッセル。
「お前も食え、ってことだよ」
「いいのか？　……いただきます」

「勝った！　どうだ！　まいったか！」
　勝ったラッセルは喜びの声を上げた。
　ゲームをしながらおにぎりを食べているうち、なんとなく情のようなものが湧いたのを感じながらラッセルは言う。
「なあ……石灰を撒いたり子供泣かしたりしなくても、悪い子にはびっくり箱とか、勉強教材とかちょっとしたサンタ的な意地悪でもいいんじゃね？」
「んだな」
　なまはげがブラックサンタのほうを見る。
「ちょっとやりすぎたかもな。……クリスマスに流行病にかかって、出番がなかったのが悔しくてな」
　サンタの告白に、ラッセルは頷いた。
「そうだったのか、大変だったな。でも……」
「わかったよ。ここにはいい子がたくさんいるしな」
　そしてブラックサンタは、袋からプレゼントを取り出しラッセルに渡す。
「お前にも菓子のプレゼントだ」
　それは、女の子が喜びそうな可愛いリボンが巻かれた華やかな袋だった。

　やがてブラックサンタとなまはげは去り、ラッセルもフクロウになって飛び立った。
　静かになり、柚春がそっと顔を出した。
「……平和だったね。喜んでくれたかな。あっ」
　テーブルには小さな袋と箱が残されていた。
　小さな袋にはポプリが、箱にはきりたんぽセットが入っていた。
「今度みんなでいただこうか」
　サンタの思い出を話しながら、柚春とウォルター、メアリは夕飯やお茶を楽しんだのだった。

「なんだったのかしら……」
　箒を片付けた智依子は、眠り込んだ楓を布団に入れて少し前のことを思い出していた。

「悪りい子はいね……うおっ？」
　後から入ってきたなまはげは、先に立って家に入っていたブラックサンタにぶつかって言葉を止めた。
　楓に抱きつかれたサンタはたじろいでいるようだ。
「寝ていたのか。……なら、悪い子ではないな」
　ブラックサンタの口調が柔らかくなっていた。
「良い子は眠りなさい」
　そう言ってサンタは楓の頭に手を乗せ、すると楓のまぶたがすうっと閉じた。
「こんな時にいきなり来られても困ります！　不法侵入ですよ」
　呆然としつつも、智依子は二人にお説教しようとした。
「すまんすまん」
「邪魔したな」
　二人はあっという間に窓から出て行ってしまった。
　部屋の隅には、見覚えのないプレゼントの箱が残されていて。
　中を改めると、キャンディやクッキーが入っていた。
（無事でよかった……）
　楓の幸せそうな寝顔を見ながら、智依子はしみじみと思うのだった。

　銭湯から出た綾花と珪は、空を見上げ周囲を見回した。
　道路はすっかり綺麗になっている。
「ブラックサンタもなまはげもいなくなったみたいですね」
「それじゃ、帰ろうか」
　心も体も暖かくなり、二人は帰途に就いた。

　

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あとがき

担当マスター：天村花海
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございました。
ブラックサンタとなまはげは無事帰っていき、怖い目にあった子供も悪い夢を忘れることができたようです。

お手伝いいただいた皆様には二人からささやかなプレゼントが届いたようです。
個別コメントでプレゼントをお送りしましたので、お気に召しましたらご自身でアイテム化などしてお楽しみください。

それでは、またご縁がありましたらご参加お待ちしております。

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