遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆｜リアクション

遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆

　稲積柚春はウォルター・Bとのデートの帰り道だった。
（夜空には飛行機……じゃなくて）
　柚春は目を見張り、思わず声を上げる。
「サンタさん？　……トナカイがソリをひいて……お隣は誰だろう」
「ずいぶんのんびりしたサンタさんだねぇ」
　ウォルターも空を見つめ、首をひねった。
「配達忘れがあって上司に怒られながらやってきたのかな……」
　柚春の発想に、目を点にするウォルター。
「なるほどねぇ」
「だとしたら疲れてるよね。しっかりおもてなししなきゃ」
「えっ？」
　驚くウォルターだが、柚春の頭には次々とアイディアが浮かぶ。
「トナカイにはにんじん、サンタさんにはミルクとクッキーを用意してあげるのがいいんだっけ。ワットの家に煙突はなかったよね？」
「……ああ、ないね」
「広いお庭に置いていたら、休憩に立ち寄ってくれるといいな」
　そんな話をしながら、星ヶ丘の一軒家であるウォルター邸に向かう二人。

「上司の方には何がいいだろう？　メアリさんにキッチンの使用許可をもらって、今ある物で手早く出来るもの……サンドイッチとか？　お仕事中ならお酒はダメだし、温かいお茶とおにぎりみたいに片手で食べられるようなのがいいな」
「……本気でやるつもりなのかい？」
　ちょっと怪訝そうな表情になるウォルターに、柚春は笑顔を向ける。
「……なんて、本当に来てるわけじゃないから急がなくていいと思うけど、なんとなくそう見えたからやりたいんだよね。僕の家だとベランダも狭いし、お供えさせてほしいな」
「しょうがないな。柚春がやりたいならどうぞ」
「やった！」
　ウォルターの家についた柚春は、さっそくメアリ・エヴァンズに声をかけた。
「こんばんはメアリさん。すみません、ちょっとキッチンを貸してもらえませんか？」
　
　最終的に柚春は、にんじんと木の実と水、クッキーとマフィンとミルク、具の入ったおにぎり数種と緑茶、それから労いの言葉を書いたメッセージカードを用意したのだった。
「でもブラックサンタだったよぉ？　悪いサンタかもねぇ」
　ウォルターは悪い顔をしてみせるが。
「もし、庭を荒らされるとか悪いことをされたならみんなで叱ろう」
　柚春は答えるのだった。
「監視するの？」
「食べてる所は覗き見たいけど、こういうのは正体を見てはいけないと思うから僕はやめておくよ」

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