遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆｜リアクション

遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆

『いた！』
　なまはげとブラックサンタの姿を見つけたラッセルは、シロフクロウから人の姿に戻った。
「待て！」
　振り向いたサンタズを説得しようと、ラッセルは声を張る。
「悪い子は自業自得でもあるけど、お前らが悪いことしちゃかえって悪い子が増えちまうかもしれねーだろうが！」
「なんだお前は？」
「悪りい子か？」　
　二人がこちらに気を取られた隙に、ラッセルはソリに置かれた灰色の袋をかすめ取ろうとしたが。
「お、重い……」
　灰の重さに驚き、とりあえず持ち上げるのは諦めた。
「俺と勝負しろ！」
「勝負、だと……？」
　ラッセルの勢いにブラックサンタはたじろいだ。
「面白い、戦いを挑むというのか？」
　なまはげの持つ出刃包丁がギラリと光った。
　だがラッセルはひるまない。
（ヒーロー気取りでやりすぎちまうことってあるよな……無茶する前に説得や勝負して、平和的にお灸を据えて改心させられれば）
　そんな思いで声を張る。
「スピード勝負だ！　トランプだ！　人生ゲームだ！　じゃんけんだ！」
　意地でも勝つ心積もりだが、サンタたちを楽しませたいという気持ちもあった。
「ふん、面白い。ならやろうではないか」
「だが、まずはここの家の子を見てからだ」
　なまはげが片手をあげると、なんと家の窓が勝手に開いた。
　ブラックサンタとなまはげの体が宙に浮き、窓の中へと入っていく。
「ま、待て！」
　慌てるラッセル。

（騒がしいと思ったら……クリスマスが終わってもう1カ月が過ぎようってときに、なぜかブラックサンタとなまはげ？）
　娘の楓を寝かしつけた梓智依子は、窓から見える光景に唖然としていた。
　しかも窓が勝手に開き、ブラックサンタがふわりと飛び込んできたではないか。
（何だかよくわからないけれど、こんなの子供たちに見せられない──！）
　智依子はとりあえず、手近にあった箒を手に立ち向かおうとしたが。
「ママー、どうしたの？」
　後ろから聞こえた声にぎょっとして振り向いた。
　楓が目をこすりながら体を起こしている。
　騒々しい気配に目が覚ましてしまったらしい。
　寝ぼけ眼で聞いてきた娘を智依子はあわててかばおうとするが。
「あっ、サンタさんだー！」
　楓は大はしゃぎでブラックサンタの方へと突撃した。
「楓、そいつに近づいちゃダメ！　そいつはサンタさんじゃない！」
　智依子は必死で声を上げる──！
（危害を加えようものならボコボコにしてやる！）
　わが身の危険を顧みず、ブチ切れそうになっていた。

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