遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆｜リアクション

遅刻のサンタ？　ブラックホーリーナイト☆

　綾辻綾花は、早川珪とのデートの帰りに空に怪しい影を見つけた。
「珪さん、あれ何でしょうか？」
「えっ？」
　聞いては見たものの、空を飛んでいるのはどう見ても。
「ブラックサンタ……となまはげに見えるね」
　二人は顔を見合わせた。
「悪い予感がしますね」
「……ああ」
「あっ、向こうに飛んでいきました」
　二人はサンタたちを追いかけ始めた。

　しばらく行くと、道のあちこちに白いものがばらまかれていた。
「雪……かと思ったら白い粉？」
「これは……石灰のようだね」
　粉を指に取って眺めた珪が言う。
「うえーん、黒いサンタこわいよ……」
　声がするほうを見ると、小学生低学年くらいの子供が泣いている。　
　その服は石灰で汚れていた。
　綾花は男の子に近づき、子供の服についてしまった石灰を払って優しく声をかけた。
「もう大丈夫だからね」
「なんか鬼みたいなのもいた。ぼく、悪い子なの？」
「そんなことないと思います。本物のサンタさんはこんな悪いことをしないから、大丈夫」
　綾花に優しく教えられ、子供は泣き止んで家へと帰っていった。

「クネヒト・ループレヒトか……黒いサンタクロースとも呼ばれており、中世ドイツの時代に、悪い行いを日常的にしていた子供たちに様々なお仕置きを与えたと言われているけど」
　珪が説明する。
「なまはげは、秋田の男鹿半島周辺で行われてきた年中行事で、仮面をつけ藁の衣装をまとった神の使いだね」
「小さい子を怖がらせるなんてひどいです。道が汚れているのもそのせいでしょうか」
　道は石灰ですっかり汚れてしまっている。
「掃除しなくちゃ。箒を使いたいですが、ここからなら寮のほうが近いでしょうか」
　綾花と珪は箒を取りに猫鳴館へ向かった。

このページにイラストを設定する