インターネットの向こう側　―拡散希望―｜リアクション

インターネットの向こう側　―拡散希望―

◆その後

　アルバイト代をもらった綾花はその使い道を考えていた。
　ニャンスタグニャムで紹介された写真はたちまち多くの人達の目に止まる。
　投稿した写真には『綺麗だニャ』、とか『美味しそうだニャ』などのコメントをつけていたのだが、それが可愛いと大絶賛を博していた。
「綾辻さん、さてどうしようか」
「美味しいもの食べに行きますか？」
「うん、そうだね」
　綾花は珪先生と手を繋いで歩きながら、その使い道を相談する。
　二人でもらったから二人で一緒に使いたい。
　彼の温もりに染まる指先に。
　この時間が少しでも長く続けばいいなと――綾花は願いながら。

「視聴回数が大分増えているわね」
「ああ。あの動画、大人気だね」
　朝衣は表情を豊かにして隣の遥人を見つめる。
　改めてMewTubeで紹介された動画の影響で、寝子島にマリンスポーツをしに訪れる人達が増えたという。

「なかなか面白いアルバイトだったねぇ」
「あの場所、ねこったーで紹介されたけど、大好評だったよね」
　ウォルターと柚春は自然と寄り添う。
　願わくば、寝子島に訪れた恋人たちがあの場所を好きになってくれますようにと。

「ラッセル、あの写真撮ったの、おまえたちだろ？」
　海道千里とバイト仲間がそう問いかけてくる。
「何故、それを？」
「PN『桜晴れ』でピンと来たからな」
　どうやらPNでラッセルたちだと気づいたようだ。
　その状況に翻弄されつつも、ラッセルはもらった給料を晴月に手渡した。
「もらっていいの？」
「おう、探してきたのは晴月だから大事に使えよ」
「ラッセル、ありがとう」
　晴月の花開いた笑顔に、ラッセルは表情を綻ばせる。
　こんなにも嬉しいのはきっと晴月が喜んでくれたから。
　だからこそ、彼女がいつまでも寝子島に吹きとどまっているように願わずにはいられなかった。

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