インターネットの向こう側　―拡散希望―｜リアクション

インターネットの向こう側　―拡散希望―

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　その日、三折部朝衣は町長公認で寝子島の魅力を紹介するアルバイトをすることになった。
　事の発端はいつものように寝子島町役場に出勤した時の事だった。
　寝子島町役場に勤務する朝衣は多忙な日々を送っている。
　寝子島高校を卒業してすぐに勤め始め、役場の総務課でひたすら書類仕事をこなしていた際に訪れた去年の四月の人事異動。
　観光課か地域振興課への異動と噂され、彼女自身もまた、そうだろうと思っていた。
　しかし、そこに降ってわいた町長秘書への抜擢は今でも朝衣にとって青天の霹靂だ。
　秘書に抜擢されてからはさらに忙しさが増したこの頃、町長である中沢リッカルドから思わぬ呼び出しを受けた。
「朝衣君、ちょっといいかな？」
「はい」
　町長が見せたのは寝子島の魅力を紹介するアルバイトが載った求人サイトだった。
「こんなアルバイトがあるんだが、君やってみないか？」
「あの、公務員は副業禁止じゃ？」
「頼むよ、朝衣君」
　朝衣の疑問をよそに、あれよあれよという間にアルバイトの話は進んでいく。
　結局、朝衣は同棲中の婚約者、住沢遥人と一緒にこのバイトに乗っかることになったのだ。
「……一応、町長公認と言うことになったけど、こんなんでいいの？」
「いいんじゃないか」
　朝衣と遥人は色々と案を出していく。
　その結果、サーフィンが共通の趣味の二人は寝子島のサーフスポットを紹介することにした。

　朝衣はサーフボードを抱えて歩を進める。隣には遥人がいる。目的の海岸に近づくに連れて徐々に海の匂いが強くなってきた。
　寝子島でサーフスポットと言えば寝子ヶ浜海岸だ。
　例年、海での憩いを求めて観光客が訪れるそこは、年中いい波がコンスタントに来るのと、冬でもそこそこの温暖なので一年中、サーフィンを楽しめる。
「天気もいいし、絶好のサーフィン日和ね」
「そうだね。波に乗ってみる？」
　遥人の言葉に、迷う暇も考える必要もない。
　それならば、導かれる答えは一つしかないからだ。
「もちろん、さあ、行くわよ！」
　朝衣はウェットスーツに着替え、アクションカメラを装着する。そしてサーフボードを手に冬の海へと足を向けた。
「来た、いい波！」
「ああ、最高だね」
　二人で大きな波に挑み、この一瞬一瞬を噛みしめ、充足を感じる。
　波に乗った朝衣が狙うのは寝子島の海岸に迫るところだ。
　その瞬間を写したらさぞかし迫力満点だろう。
　臨場感溢れるその光景をMewTubeやNyakTokなどに投稿すれば、多くの人達の目に止まるはずだ。
　冬の海の弾ける飛沫がどこまでも恋人たちの楽しげな姿を演出していた。

「他にも様々なマリンスポーツを楽しめる事をアピールしたいわね」
　波を堪能した朝衣は以前、参加したマリンスポーツ体験会の出来事を呼び起こす。
「あれも紹介しましょうよ」
　朝衣の視線の先には沖合を豪快に走り抜けていくジェットスキーの姿があった。浜辺にはレンタルショップがあるのが見える。
「ジェットスキーか、いいね」
　そう応えた遥人とともにショップへ向かい、軽く安全講習を受ける。そして、ライディングギアを身に着けた二人はジェットスキーで海原へと繰り出した。
　水面を滑るように疾走しながら、二人のジェットスキーは豪快に駆け抜けていった。

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