年賀状を出そうよ｜リアクション

年賀状を出そうよ

（珪さんに年賀状を書こうかな）
　早川珪の顔を思い浮かべた綾辻綾花は、だがハガキを前にして緊張してきてしまった。
　猫鳴館の自室にて、友達や家族に出す年賀状を書き終えて。
（あとは珪さんだけ）
　何の絵を描こうか、と思いを巡らせる。

（来年は戌年だから犬のイラストは描きたいな）
　猫好きな綾花ではあるが、さすがにここは干支に合わせるべきだろう。
　並んでお座りしてるわんこ２匹を楽しそうに描いていく。
（大きい方のわんこはちょっと珪さんに似てるかも）
　近くにはピンクのハートを描き入れる。

（文面は……）
『去年は大変お世話になりました。今年もよろしくお願いします。』
　浮かんだ文章は、ちょっとありきたりに思えた。
（日頃の感謝の気持ちは入れたいな）
　休みの日に勉強教えてもらったり、イベントがあるたびに綾花が誘ったら来てくれて。
（楽しんでもらえてるんですよね？　珪さんの優しさが嬉しいです）

　来年の春には教師と生徒ではなくなる。
（恋人になれてたら良いけど……）
　告白はまだだけれど、告白以外で互いの気持ちを伝えあっている。
（卒業まで珪さんの気持ちが変わらないと良いな）
　あと三か月、大丈夫なはず、と信じているけど。
　他に好きな人ができたり嫌われたりということはなくても、卒業して会えなくなったら関係は変わるかもしれない。
　少し考えて綾花はちょっと小さな文字で書き添えた。
『卒業したら珪さんと旅行に行きたいです』
　文字は小さいけれど、思いは決して小さくはない。

（年賀状を読んだ珪さんの反応が気になります）
　出す前から綾花はそわそわしてしまう。
（特に旅行に一緒に行ってくれるのかどうか……）

　お返事はいつもらえるだろうか。
　いっそ、年賀状を待たずに大晦日に聞いてしまいたいくらいだった。
　
　

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