年賀状を出そうよ｜リアクション

年賀状を出そうよ

　旧市街の自宅のアパートで落合まゆらは、こたつで白紙の年賀はがきに向かっていた。
　来年の春には寝子島アニメーション学院声優科を卒業して、準大手の声優事務所への所属が決まっている。
　だから今日描いている年賀はがきは寝子島から出す最後の年賀状と言うことになる。
　
　可愛い系のものも描けるが、綺麗めの絵柄で人物なら10〜20代の男女が得意だ。
　背景や動物も割といける方。苦手なのはロボットとかだろうか。
　一枚一枚イラストを描いている。
「来年の干支は戌年だからそれにちなんだけもみみのキャラとか……」
　茶色の髪に茶色の瞳の可愛いらしいけもキャラは、自分をモデルにしていたりする。
「やっぱり『魔法少女ミスティックアリア』は描きたいからミスティに晴着を着せようかな。続編の『魔法少女ミスティックエール』のキャラにするか迷うなー」
　色々なお正月のシチュエーションを描いたものを、心を込めて一枚一枚コピックなどで描いていく。
　どれも１枚として同じデザインはない。

　枚数は全部で30枚くらいで、専門学校の友達や寝子高時代の友達が中心だ。
　ちなみに誰にどのイラストの年賀状が届くかはランダムだったりする。
「お正月向きじゃないけど……『腐滅の刃』の悲惨様も一枚くらい入れておこうかな？」　
　人によってはさすがにドン引かれそうだから、ディフォルメして可愛くしたほうがいいだろうか。
　
　イラストは全部完成したが、まだ気は抜けない。
　住所も印刷に頼らず、きちんと手書きで書き入れる。
　イラストが完成しているだけに、ここで間違うと泣くに泣けない。
　集中して、間違えないように書き入れて……
「できた」
　暖かいこたつの中で、疲れとともに達成感を感じる。
（ちょっと休もう……）
　横になったまゆらは、そのまま寝入ってしまった。
　夢の中で、晴着のミスティやけもキャラ、悲惨様が入り乱れて踊っていた。

　ちなみに、年賀状は翌日無事に投函したらしい。

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