【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？氷結、四日間の死線＜物語編＞

　高校に入って半年以上過ぎた。
　仙藤蒼は、高校の勉強も要領もわかってきて、それなりにいい成績を収めたりしているが、ここ最近は同じクラスの友達、宮内詠美と一緒に勉強している。
　
「いよいよ明日ね。これさえ終われば冬休みが待ってるわ」
　大学の冬休みに入ったばかりの姉、仙藤紫も一緒だ。
（大学の後期試験は来年なので、少しは時間的余裕があるしね）
　ここ最近は蒼の……というよりは、蒼の友達の詠美の苦手な英語の勉強を教えていた。

　少し前に蒼は詠美とこんな話をした。
「青は英語得意だよね」
「まあね……詠美は負けず嫌いだから、ほかの科目じゃ成績いいのにね」　
「一部の科目では学年上位だだけど、英語が今一つで……特に和文英訳で、躓いたりしている」
　悔しそうな詠美に、蒼は言う。
「詠美が英語で躓く理由、判る」
「えっ？」
「私は海外のゲーマーと英語でやり取りすることが多いからね。詠美は覚えている単語の量が少ないのよ」
「うん……」
　うつむく様子からすると、詠美もそのことは判っているのだ。
「何とか単語の量を増やそうとしているけど、かなり苦戦してて……」
「一緒に勉強してみる？　お姉ちゃんも教えてくれると思う」
「いいの？」
　そんなこんなで、ここ最近は蒼と紫と一緒に英単語を増やす特訓をしていて、今日はその最終仕上げだ。

　詠美は蒼と同じ水泳部員でもあり、水泳部OGの紫は先生に頼まれて指導に当たっていた。
　とにかく負けず嫌いな子で何事にも周囲がドンびくぐらい打ち込む子だ。
　おとなしそうな外見と中身が完全に正反対な熱血キャラ。でもちょっと騒がしい。
　人一倍やる気はあるのに飲み込みが遅く、水泳の指導の時はだいぶてこずったけれど、最後にはその熱意で見違えるように上達した。

　紫は詠美が英語のどこで躓いたかを調べて、その躓きの原因を突き止めることにした。
（語彙力を高めるところからスタートして、そこから英文法などを教えていく方法を取っていきましょう）
「まずここからここまでの単語を覚えてね。和訳だけじゃなく、英訳もできるくらい覚えてほしいわ。宮内さんなら、余裕よね？」
「はい！」
　元々負けず嫌いな性格なので、その辺りを刺激してやると詠美は驚くほどやる気を出して、試験前日までに相応のレベルまで仕上がったのは面食らった。

　
「それじゃ今日は和文英訳の問題を出すわね。『騒いではいけません。赤ちゃんが眠っているから』」
　蒼は少し考えてペンを走らせ、詠美もそれに続く。
　二人はほぼ同時に答えを書き終えた。
『Don't be noisy. Because the baby is sleeping.』
　答えはどちらも同じで、正解だった。
「やった！」
　嬉しそうな詠美の笑顔を見ながら蒼は思う。
（苦手をかなり克服できたようで何より）
　他にもいくつか出題範囲の問題を解いた。
「ありがとうございます。お姉さんのおかげです」
　頭を下げる詠美は、完全に自信を持ったようだ。
「あとは明日の本番でがんばるだけね」
　頷きながら、紫は声をかける。
（とはいえ、試験は英語だけではないので、その勉強もしなければいけないけど……どうやら付き合いが長くなりそう）
　内心そう思うのだった。
　

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