もふもふもふもふもふもふもふも｜リアクション

もふもふもふもふもふもふもふも

◆変わらない日常

「さて、今日も狼たちを見に行きましょうかね」

　アーサー・Ｔ・シートンは必要なものを抱えて厩舎に向かう。彼は食肉目に詳しい獣医にして、このまたたび市動物園の職員。主に緊急時に獣医をしているが、いつもは飼育員として活動している。
　担当しているのは猛獣エリア。いつもの通り、数頭いる狼たちの世話から始める。彼がやってくると狼たちが近づいてくる。まずはハイイロオオカミであるビアンカの様子を見る。慣れた様子で体に触れる。その間ビアンカも大人しくしている。

「今日も問題ないですね……来年の春に子供たちが無事に生まれていければいいですね、ビアンカ」

　ビアンカは同じくハイイロオオカミのクルトと番になっている。クルトとビアンカはそれぞれオスとメスのリーダー。この２頭は数頭の仔を成していて、今年も仔を設けているところ。
　そういう時期は動物たちも神経質になりやすいし、それを見守る飼育員も普段以上に気を配る。他の狼たちの様子も確認した後はシロクマなど他の猛獣のいるところへ見回りにいく。
　
　動物園には多様な動物がいて、同じ動物であっても性格や好みが違ったりする。気候の変化など外的要因も無視できない。
　いつもと同じこと、いつもと違うこと。そういう点を見落とさないように気を付けながら動物たちと接する。大型の動物たちの様子を確かめ終えたあとは、小動物のいるあたりに移動する。

「……おや？」

　ふれあい広場が見えてきた頃に野生のタヌキがどこかへ去っていくのが見えた。

「あれは、山から来ましたね。餌でも探しているんでしょうかね……」

　動物園は外部から完全に塞がれているわけではない。迷い込んでくることもあるだろうとアーサーは考えた。砧ポン吉が動物園の動物たちに会いに来たことは知る由もない。
　そんな出来事はあったものの、動物たちに問題はなく一安心。一日の仕事を終えたアーサーは心地よい疲労感とともに動物園を後にした。

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