焼きそばパン、バトルロワイヤル！｜リアクション

焼きそばパン、バトルロワイヤル！

そのすきに

　蒼と紫と遠海が、三すくみのメキシカン・スタンドオフに陥って固まっている。
　その隙に、息を顰めて動いている者がいた。
　千里だ。
　千里は皆がやりあっている間に匍匐前進で噴水の反対側から回り込み、ワゴンカーに近づこうとしていた。
（よし、あともうちょっと）
　千里は三すくみの三人を注視していた。
　だから、万里が背後からそっと近づいてきていることに気づかなかった。
「隙あり！！！」
　万里の声が聞こえ、はっとして振り返ったとき。
　万里が振りかぶった日本刀は、鋭く振り下ろされようとしていた。
「っ」
　千里は、万里の得物である日本刀から目を離さず、咄嗟に横に転がった。
　幸い脳天を真っ二つとはならなかったが、完全には避けきれず、肩口が刃で浅く切り裂かれる。
　だが痛みを感じている暇はない。
　千里は下段からバットを横なぎに打つ。
　バッドは、分厚いメイド服のワンピースに当たり――。
　ガチン、と何か、足ではない固いものにぶつかった。

「ごめんあそばせ、ご主人様」

「なにその四次元ポケットみたいなスカート！」
　千里は驚愕した。
　万里は嫣然と微笑む。
「使うのは日本刀だけですよ。メイドはご奉仕する身……とはいえ、たとえご主人様やお嬢様が相手でも退けない時もあるものなんです。そう、今がその時！！　焼きそばパンは私が頂戴します！」
「こっちだって譲れない！　ラッセルオススメのおばちゃんの焼きそばパン！　一度も食べたことないんだ、渡してもらおうか」
「渡してもらいたければ、私に勝ってごらんなさい！」
「そうさせてもらう！」
　千里は次々とボールをバットで撃つ。
　万里は駆けながら避ける。
　避けきれないボールは日本刀で真っ二つだ！
　
　千里と万里の二人がワゴンに急接近したことで、蒼と紫と遠海のメキシカン・スタンドオフも崩れた。
「あっ、ちょっと」
「焼きそばパンは渡せないわ」
「抜け駆けは許さないんだからっ！」
　五人は走っていた。
　とにかく走っていた。
　時折銃弾や野球ボールが飛び交う中を、猪突猛進に走っていた。

　そして、おばちゃんの元に真っ先にたどり着いたのは――！

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