焼きそばパン、バトルロワイヤル！｜リアクション

焼きそばパン、バトルロワイヤル！

切って落とされた火蓋～乱戦

　ののこによってぶっ放されたマシンガンの弾。
「いきなり！？」
　千里をはじめ、その場に居合わせた面々は華麗に避けた。
　テオが世界を切り分けた影響だろうか、身体は軽く、手にした武器も手になじんでいる。
「行きますよ」
　メイド服のスカートを翻した万里は、弾丸のいくつかをカンカンと弾く。
「うおおおお！　やきそばパーーーン！！！」
　叫びながら滅多矢鱈にぶっ放し続けるののこ。
　万里は刀でさばききれなかった弾を、スカートを翻してスペインの闘牛士のごとくヒラリとかわす。
「ふふ、そんな攻撃では当たりませんよ」

◇

　そのころ。
　ののこの銃弾から逃れて、噴水の反対側に回り込んだ千里は、遠海と正面から向き合っていた。
「わ、女の子……」
　遠海はさらさらの髪をした、鎌倉の名家の清楚なお嬢様然とした雰囲気の少女だ。
　千里が一瞬ためらったのも無理はない。

　だが、千里は、遠海が食べ物のためなら容赦のない少女だということを知らなかった。
「焼きそばパンは私のものッ！」
　遠海はためらわなかった。
（並みいるライバルどもを蹴散らすには、やはりスピード勝負に限る）
　左右に構えたトンファーを、鋭く瞬差で振り下ろす。
「う、わっ」
　千里は身を仰け反らせて避ける。
　身軽さには自信があった。
　ちょ、いま誰か、低身長なので当たりづらいとか、言ったか？
　フットワークが軽いと言ってくれ！
　下がった分だけ遠海のトンファーが迫ってくる。
「フッ、フッ！」
「わ、わ！」
　防戦一方の千里。
　千里の武器は野球のバットだが、近距離過ぎてボールを打つことができない。
　バットで殴るか？　でも、相手は女子だ。
「た、戦いづらいっ」

◇

　紫と蒼の姉妹は、ののこの銃弾を同じ動きで同じ方向に避けていた。
「お姉ちゃん。お姉ちゃんとの戦いは避けられないと思ってる。でも――」
「その前に、目の前の敵を対処しなくちゃね」
　すぐさま並みいるライバルたちを愛銃のデザートイーグルで蹴散らしにかかる蒼。
　やりこみ型ゲーマーの蒼は、一人称視点のシューティングゲームで散々に鍛えているのである。
「さすがね、蒼」
　グロック17を両手でしっかりと握り込む紫。
（私には蒼みたいな技術はない。だからこそ、冷静に対応すべきね）
　まずは着実に。
　ライバルを一人ずつ減らす。
　蒼と紫は、戦いに夢中になっている遠海と千里に銃口を向ける。

◇

　ちゅん、ちゅん……っ、と二発の弾丸が発射され、遠海と千里のこめかみを掠めた。
「！」
「どこから」
　遠海と千里は、弾が発射された方向を素早く確認する。
　並んで銃を構えているのは蒼と紫だ。
　弾が掠めたのがこめかみであることを考えると、確実にヘッドショットを狙ってきている。
　姉妹の銃から、同時に二発目が発射される。
「ここで撃たれるなんてごめんよ」
「同感だ！」
　遠海は銃弾を避けて逃げ、千里は遠海とは反対方向の物陰に隠れる。

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