携帯戦記カプセルギア　外伝「なにげない、ひととき」｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝「なにげない、ひととき」

●●●思い出の引き金●●●
　カプギアをはじめとした遊びで賑わう旧市街の一角に一人の男が散歩に来た。
　時折流れる風に黄金の髪が揺れ、心地よさに目を細めるのは寝子高職員のウォルター・B。
　ウォルターは学校も部活も休みの今日は一人の人間としての時間だ。

「あっ」

　カメラを撮る音と少し気の抜けた声に目を向けると稲積柚春が居た。
　柚春は普段から自らのカプギア、ворをぬい活と称して連れ回している。
　シャッターを切るとレンズ越しにウォルターの足が映ってしまった。

「き、奇遇ですね…！　今日はお休み…ですか…？」

　柚春は休みの日に有効な大切な約束を頭の中で反芻させる。
　ウォルターは分かっているのか分かっていないのか、柔らかな笑みを浮かべながら肯定する。
　それなら…とворを抱き上げてウォルターの近く、ちょっとプライベートゾーンに入りながら。

「良かったら、カプセルギアの見学しませんか？　ウォルターさん」
「…少しだけだぞぉ？」

　首肯するウォルターに喜びの顔を見せる柚春、なぜか動いたような気がするвор。
　盛り上がり過ぎている所は避けて、カプセルギアとは、なんて説明をする柚春。
　気が付けばノーマルギアの支給所とガチャガチャが並ぶ所に着く。

「まあ僕も、ぬい活ばかりだから詳しいわけでもないけど…」

　ノーマルギアの一つを手に取り、ウォルターに渡す。
　受け取ったウォルターがノーマルギアの観察をし始めるのを見て、思いつく。

「ウォルターさんが持ってみるのもいいかもね！」
「生徒たちもやってるからなぁ」

　見知った生徒がちらほらといるこの場所で何かを感じたのかウォルターは説明書を読む。
　誘いに乗ってくれたと嬉しくなる柚春を横目にガチャガチャを回すウォルター。
　出てきたのはチョーク状の弾が射出される銃。柚春とウォルターは思わず顔を見合わせ笑う。

「ねぇ、今買ったの！？　良かったら僕たちとやろうよ！」

　声をかけてきたのはゴツいカプギアを持つ男子とドレスを身にまとうカプギアを持つ女子。
　快諾した二人はA.I.C.O.のインストールから操作方法や戦闘方式などを小学生男女に聞く。
　準備が整ったフィールドに並ぶ柚春とвор、そしてウォルターとほぼノーマルギア。

「ウォルターさん、それで大丈夫なんですか…？」
「もう硬貨なかったからねぇ」

　バトルスタートとスマホに表示され、カプギアが一斉に動き出す。
　ウォルターのカプギアからはチョークが射出されると男子のカプギアに当たる。
　だが、女子のカプギアのバフもあり、さほどのダメージにならない。

「ええと、これでこう…」

　バトルをあまりしない柚春も何とかворの操作をする。
　ворのスピードで男子のカプギアに乗るとボディに仕込んでいた短剣を突き刺す。
　しかし、男子のカプギアに振り回され、ворが吹き飛んでしまう。

　追撃をしようとする男子のカプギアだが、目に見えてスピードが落ちる。
　よく見るとウォルターのカプギアが女子のカプギアを倒していた。
　ворがパチンコを取り出し、遠距離攻撃で攻める。これで終わるかと思われたが。

「わっ！？」

　男子のカプギアが地面を叩くと衝撃波が発生し、巻き込まれてダウンしてしまうвор。
　無事だったウォルターのカプギアが距離を詰め、男子のカプギアをチョークで串刺しにする。
　それが決め手となり、柚春とウォルターが勝利となった。

「最後まで油断しないことだねぇ」
「うぅ…。なら、もう一回どうですか？」

　腕時計を確認すると柚春の誘いにやんわりと断ったウォルター。予定があるのだそうだ。
　柚春はもう少し一緒に居たかったが、予定があるのなら仕方がないと背中を見送ったのだった。

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