●●●懐古する高み●●●
　サバイバルバトルに勝利した蒼は少し気分が上がっていた。
　元は昔よく遊んでいた懐かしい遊び場が賑わっているのを見て立ち寄った蒼。
　カプギアをしていたからと新調した強化パーツを装備してサバイバルバトルに参戦。

「運が良かったわねぇ」

　禍々しく赤化したノーマルギアを思い出しながらDiablo Azulを撫でる。
　もう少し遊ぼうかな、と周りを見回すとちょうど戦い終わったペアが居た。
　片方は別の人に誘われたので、もう片方に、と見ると以前戦ったことのある顔があった。

「やぁ、久しぶりね、幸次君。ねぇ、もしよければ私とバトルしない？」
「あ、仙藤さん！　うん！　いいよ！」

　元気に返事をしてくれたのはカラスの羽が特徴の黒猫型カプギアを持つ万条 幸次。
　お礼を言いながら微笑ましさから笑みがこぼれる蒼。
　お互いのカプギアを置き、スマホを構えるとバトルスタートの機械音声が流れる。

「よし、行くぞカラスマル！」

　幸次は自分のカプギア、妖怪猫・カラスマルに声をかけながら前進させる。
　スピードに重点を置いたカラスマルはすぐにDiablo Azulに接近できた。
　前回はその遠距離攻撃に苦戦を強いられた経験から近接戦を選択したが。

「いくよ、Diablo Azul！」

　幸次の掛け声に応じた蒼はDiablo Azulをバックステップさせる。
　カラスマルはRアーム、ヤツデノウチワで竜巻を起こすもDiablo Azulに届かない。
　竜巻の横をすり抜けDiablo Azulがレーザーソードを突いてくる。

「ぃったぁ！？」

　焦る幸次はカラスマルを回避させるも間に合わずにダメージを負う。
　今のDiablo Azulは格闘戦に有利なスタイルであり、カラスマルのHPゲージは3割削れた。
　カラスマルの反撃で再度竜巻を発生させる。先ほどと違うのは返すウチワで強風も追加。

「わ、いいね！」

　竜巻に巻き込まれないようDiablo Azulがサイドステップするも強風に当たる。
　楽しそうにする蒼と必死な幸次は対照的であるが、どちらもカプギアを堪能している。
　カラスマルはLアーム、シャクジョーステッキを振ると装飾の猫が笑うような音が鳴る。

「カラスマルの本領発揮だよ！」

　シャクジョーステッキでアタックもスピードも上がり、Diablo Azulへ連撃を繰り出す。
　Diablo Azulは盾を構えてダメージを軽減し、隙あらばレーザーソードでの攻撃をする。
　しかし、先ほど見た動きであるうえ常に動いているため、なかなか当たらない。

「強くなったわねぇ」

　初心者であった幸次が確実に強くなった姿に蒼は少し感心をしていた。
　手を抜いているわけではないが、もう少し攻撃的になってもいいか、とスマホを操作する。
　カラスマルの竜巻や強風、杖の攻撃もシールドに当たればDiablo Azulの隙にはなりにくい。

「っ、当たってるのに…！」

　Diablo Azulに徐々に距離を詰められ、わずかなダメージしか与えられていないカラスマル。
　攻撃の手数と速さで攻める戦法にDiablo Azulのシールドの相性は悪いように思える。
　ただ、やりようがないわけではない、できるかどうかは幸次の勇気次第。

「次で決めようかな！」

　Diablo Azulの攻撃はカラスマルのHPゲージを着実に削っていき、あと少しで決着がつく。
　終止符を打つために盾を構えつつ竜巻を避け、Diablo Azulがカラスマルを射程に捉える。
　対するカラスマルはニャンコレッグで飛躍、そしてボディのカラスウイングでホバリング。

「これをこうして…」

　迎撃に構えるDiablo Azulにシャクジョーステッキを投げつけるカラスマル。
　Diablo Azulは払うようにレーザーソードを振るうが、それがカラスマルの狙いであった。
　ホバリングを止め、落下威力と共にヤツデノウチワを突き立てる。

「こうだ！」

　Diablo Azulのシールドの隙間を縫い、ヤツデノウチワを直撃させる。
　同時にシールドに着地し、横方向のジャンプをして強引にシールドを吹き飛ばす。
　感嘆の声を上げる蒼、Diablo Azulの守りが薄くなり、そこそこのダメージを負う。

「…強いわね！」

　シールドが剥がされたDiablo Azul、シャクジョーステッキを失ったカラスマル。
　睨み合うことはなく、Diablo Azulのレーザーソードをギリギリで回避するカラスマル。
　反撃でカラスマルのシャクジョーステッキを振るうもDiablo Azulに掴まれてしまう。
　反射的にシャクジョーステッキを離し、距離を取ると近くに払いのけられたヤツデノウチワ。

「これっ！」

　カラスマルはヤツデノウチワを取ると竜巻、そして強風を発生させる。
　Diablo Azulも回避やレーザーソードを振るい、竜巻を防いでいくが。

「…っあー！　やられちゃったかぁ」

　蒼と幸次のスマホにはバトルエンドの文字。結果は妖怪猫・カラスマルの勝利だ。
　カプギアを回収し、握手を交わす二人。

「あの…ありがとうございました」
「こっちこそ！　強くなったわね！　もう一回やる？」

　お互いの健闘を讃え、再戦を承諾すると先ほどの位置に戻る。
　今度こそと闘志を燃やす蒼と勝利の余韻を勢いに変える幸次。
　カプギアの楽しさで時が早く流れる二人であった。