リア充爆発した！｜リアクション

リア充爆発した！

　寝子島、シーサイドタウンにて。

　ぶおおおんっ！

　突然響いた爆音に、桜井ラッセルは振り返った。
　と、そこにははためくスカートを押さえる女性が！
「きゃあああっ！」
「うおおおおっ！」
　傍らの男性は恋人だろうか。彼女を周囲の目線から隠そうと、爆風の中必死で仁王立ちしている。
「ごめんっ、見てません！　見てませんから！」
　ラッセルは慌てて顔をそむけた。

　直後、再び聞こえた、ぶおおおんっ！　至近距離の爆風に、ラッセルの金髪が躍る。
　すぐ隣で犬の散歩をしていた夫婦っぽい二人。その間で、爆発があったようだ。
「おおっと！」
　たたらを踏み、倒れこんできた若妻を抱きとめる。
　夫の方は慌てて犬を抱え込んでいた。
（さっきはカップル、今度は夫婦……。ラブラブしてると爆弾がでるのか……？）
　すみませんごめんなさいと謝る夫婦に笑顔を返して見送って、ラッセルは呟いた。
「誰か『リア充爆破しろ』と願い続けて、神魂で実現しちまったのかな」
　だとしたら、ずいぶんはた迷惑な奴である。
「ご愁傷様で見てられねーし何とかすっか。……つか、何で俺がこんなことを……」
　ぼやきながらも、ラッセルはろっこんを用いて、鮮やかなカナリアへと姿を変えた。
　空からならば、これから被害にあいそうなラブラブカップルを発見することもたやすいと思ったのだ。
　いい雰囲気の人たちに割って入るのは気が引けるが、デート中に爆弾でふっとばされるよりはマシだろう。
（なんか破れた服で歩いてる人もいるし。あれ絶対爆発巻き込まれ組だよな……）

　－－ということで。
　ラッセルはラブラブカップルを見つけるたびに、無邪気なカナリアを装い、二人の間に割り入った。
　かわいく「キュイックィッ」と鳴いてカップルのうち一人の目を引いて、ちょっと離れた場所に誘導するか、足止めする。二人の距離を離す作戦である。

　この方法は最初のうちは成功した。
　しかしうっかり鳥好きカップルの間に入ってしまったときはさあ大変。
　二人顔を寄せてカナリアラッセルを見るものだから、爆弾が発生し、ぶおおおっ……！
　と爆発する前に、ラッセルは鷲に姿を変えて、その足で爆弾を掴んだ。
（ヤバいヤバいッ！　このまま海に捨ててやるっ！）
　ラッセルがリア充ではないことを爆弾は知っているとでもいうのか。
　それはラッセルが海に放るまで、爆発の気配すら見せなかった。
（なるほどこれなら簡単だ）

　勝った気になり進むは寝子ヶ浜海浜公園の上空。
　ぶおおおおん！　と音は聞こえるが、爆風に巻き込まれている人は少ない様子だ。
（おっ、ここにも爆弾処理している人がいるのか！）
　遠目に誰かはわからないが、女性二人が頑張っている様子。
　その二人を応援しつつ進むうち、ラッセルは、先ほど見たよりも大きな爆弾を発見した。
（あれはまずいんじゃないかっ！？　けどどうする。鷲の足じゃ掴めないし……ええいっ！　これしか方法がねぇっ！！）
　ラッセルは爆弾に向けて、ミサイルのごとし勢いで急降下した。
（頼むぞ間に合え！　ふつうの人より素早いんだし間に合ってくれぇ！）

　祈りが通じた勢いはラッセル史上最高スピード。
　鷲の突撃に驚いたカップルは、悲鳴を上げてその場から逃げ去った。
（おおっ、やった！）
　と思ったのもつかの間。

　ぶおおおおんっ！

　ラッセルの体当たりにより、爆弾は見事爆発したのだった。
「おおおおおおっ！」
　爆風に吹っ飛ばされる鷲ラッセル。
　羽がちりちり痛いほどに震えたが、抜けた様子はないようだ。
（ほっ、姿変えててよかったぜ……）
　安堵するも、彼は知らない。人の姿に戻ったときに、その服がはじけ飛んでいることを――。

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