秋空とサイクリング｜リアクション

秋空とサイクリング

◆高鳴る鼓動

　落合まゆらはねこったーのTLで『秋を楽しもう！　サイクリングロード！』のことを知った。
　秋も終わりに近づいている。それが去る前に楽しもうという自転車のイベントだ。彼女にはちょうどこの前、ガジェットのレビュー企画でゲットした電動自転車がある。
　折角の機会なので、この自転車で参加することにした。

　運動に適した服に着替え、自転車に跨った。
　このイベントには企画が３つあり、そのなかから『三夜湖タイムアタック』に参加するために九夜山を登る。山道とはいえ整備されているところは問題なく走れそうだ。

「せっかくゲットした電動自転車だもの、もっと活用してみたいよね」

　とはいえ、あまり乱暴に扱って壊しても仕方がない。軽く汗をかく程度に留めるつもりだ。会場には他の参加者がすでに集まっていた。がっちりしたマウンテンバイクもあれば、通学用の自転車もある。自転車は協力している自転車ショップからレンタルできるので多種多様だ。いちおう競争ではあるが、お祭りの雰囲気も感じられる。
　ふと選手たちのなかに浅井幸太先生がいることに気づいた。

「浅井先生お久しぶりです！」
「落合か！　元気にしてるか？」
「はい」

　懐かしさもあって雑談に花が咲く。
　しかしいざスタートラインに並ぶと、ぴりっとした空気が走る。

（軽く走ろうなんて思ってたけど、こうして参加してるのを実感するとトップに立てないまでも上位には食い込みたくなってくる）

　自分の負けず嫌いを改めて感じながらペダルにしっかり足を掛ける。
　合図とともに一斉にスタートした。上り坂では躊躇なく電動アシスト機能を使う。そうしないと体力を消耗してしまい、平たい道で容赦なく引き離されてしまう。下り坂ではスピードとタイムをできるだけ稼ぎたい。
　しかし三夜湖が山のなかにあるので起伏の激しいところがある。その斜面から駆け降りるときはジェットコースターでもなかなか体験できないスリルがある。

（ヤバいヤバいヤバい！）

　心臓は高鳴り、グリップを握る力も自然と強くなる。危険を感じる心とは裏腹に、それでも突っ走ってしまう。気づけば前方を走っていた幸太先生に追い付いた。

「お先に失礼しまーす！」

　そして次の瞬間には追い抜いてしまった。勢いに任せてそのまま走り続け、なんとか事故を起こすことなく１周まわった。

（疲れた……タイムは……？）

　水分を片手に休んでいると、まゆらや他の選手の記録が表示された。最初から競技のつもりで臨んだ人たちには流石に及ばなかったが、ギリギリ上位層に入る程度の記録となった。

（ちょっと悔しいけど、十分かな）

　現地解散した後、まゆらは寝子温泉で汗を流してから帰宅した。

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