秋空とサイクリング｜リアクション

秋空とサイクリング

◆全エリア制覇

　とある朝。
　真境名アリサは自室で目を覚ますと、体を起こして着替えた。今日はオフの日。とはいえ一日中寝ているわけにもいかない。
　外に出ると秋晴れだった。空気は澄んでいて、少し寒かった。道行く人はまばらで、中には冬服を着ている人もいる。アリサは季節の移り変わりを感じながら参道商店街までやってきた。何を買おうかと考えていたら、偶然自転車屋に貼られているポスターが目についた。

「『秋を楽しもう！　サイクリングロード！』か。どんなイベントかしら」

　詳細をみるとタイムアタックやスタンプラリーなどが企画されている。そのなかでアリサは『猫ボール探し』に興味が沸いた。さっそくそこの店で自転車を借りることにした。

（買い物は急ぐようなものでもないし、あとで大丈夫でしょ）

　自転車はオレンジの映えるクロスバイク。
　小さめのモデルで小回りがきくので操作も軽い。まずは商店街を中心にゆっくりとまわる。

「あった。あれね」

　さっそく１つ目を発見。その後も順調に見つけて、それほど時間をかけずに５つとも発見した。それを寝子島駅に持っていきスタンプをもらった。
　次に向かうのはシーサイドタウン。ここでも適当にあたりをつけてボールを探す。ボールを探すイベントではあるけど、どれも自転車に乗っていても見つけられる位置にあるためそれほど難しくない。
　２つ目のボールを見つけた頃にはお昼を少し過ぎていた。考えてみると自転車にずっと乗りっぱなしだ。

（折角ならこの近くで何か食べたい）

　この道はイベントが無ければ来なかったかもしれない。そう思って、初めて見かけた喫茶店に入ってサンドイッチとカフェオレを頼んだ。
　空腹を満たしたらまた捜索を開始する。ここも旧市街と同じように５つとも発見し、スタンプをもらう。

「ここまで来たんだから、星ヶ丘も攻略しちゃおう」

　だんだん楽しくなってきて、アリサはそう意気込んだ。星ヶ丘に向かう途中で寝子電が並走してきたので全力で漕いでみる。もちろん追い越されるが、なんだかおもしろかった。
　星ヶ丘でものんびりとボールを探す。その途中、黒崎俊介先生の自転車とぶつかりそうになる。アリサはとっさにブレーキをかけ、俊介先生は転ぶ一歩手前の姿勢でなんとか止まっている。アリサはすぐに声を掛けた。

「すみません、大丈夫ですか？」
「ああ、大丈夫。君は？」
「あ、はい、大丈夫です」

　幸い怪我もなく、簡単なやりとりだけで２人は別れた。

（なんていうか、影の薄い人だったな）

　アリサの率直な感想はそれだった。
　その後はトラブルもなく、ここでも５つのボールを集めてスタンプを受け取る。アリサはイベントを達成した満足感を抱えて旧市街まで戻った。

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