アンニュイ・オータム｜リアクション

アンニュイ・オータム

◆ゲームの悩みはゲームで解消

　寝子島高校。昼休み。
　仙藤蒼は不機嫌そうな顔で机に突っ伏していた。理由はゲームだった。

　彼女はゲーマーなので様々なゲームを嗜んでいる。
　オンラインでは『ニャンハン』と『ニャンコ・オブ・ファイターズ１５』など。しかしこの頃、こういったゲームで負け続けている。その負けを取り返そうと躍起になりさらに負ける、という負のループに陥っている。

（こんな不調は生まれて初めて……というか、最近は何かしらやる気というのが減退している）

　そんなわけで彼女はここ数日ゲームから距離を取っている。
　ではなぜ突っ伏しているかと言うと、今度は放置しているゲームがどうしても気になってしまい、そのことで頭がいっぱいになっているからだ。

「結局、私は何がしたいっていうのよ！　ああ、もうイライラする！」

　つい蒼は怒鳴ってしまった。その声に同級生の宮内詠美がびくっと体を震わせて驚いていた。

「どうしたの、蒼？」

　そう声を掛けられて蒼は思わずあちゃーと天を仰いだ。

（もうやってらんない……自己嫌悪で涙が出てきそう……）

　詠美が少し引き気味になりながら、なにか思案する。

「今日、もしよかったらゲーセンに行かない？」
「え？」

　予想外な誘いに戸惑う蒼。

「詠美ってゲームやるの？」
「蒼が夢中になってるゲームってどんなのか興味があって……」

　詠美なりの気遣いかもしれない。それを無碍にするのも忍びないので学校帰りに２人で行くことにした。ゲーセンに着くと詠美は興味深そうに店内を眺める。蒼はいつもやってる音ゲーのコーナーに案内する。コインを入れるとアップテンポの曲が流れ始めた。

「こうやって曲のタイミングに合わせてボタンを押すの」

　簡単に説明しながらテンポよくボタンを押す。詠美は感心した様子で眺めている。それから実際に詠美も音ゲーをやってみたり、２人で格ゲー対戦をやってみた。蒼のほうがゲームに慣れているので勝敗は分かり切っている。けれども、今こうして過ごす時間のなかで勝敗は重要ではなかった。夢中になって遊ぶうちに閉店時間を迎えた。
　いつのまにか蒼もスランプのことがどうでもよくなった。
　
「詠美、ありがとう」
「こっちこそありがとう、楽しかった」

　詠美の笑顔を見て、蒼も笑顔を浮かべた。

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