【中間テスト】おやつ支給、あります｜リアクション

【中間テスト】おやつ支給、あります

　水上桜は国語のテスト用紙を前にうーんと唸っていた。
　国語は得意科目であるが、逆にプレッシャーもある。
（得点稼がないと）
　苦手科目は得意科目でフォローしたいところ。
（初冠）
　古典の現代訳だが、確実な正解のない問題なのがなんとも。

春日野の　若紫の　すり衣
しのぶの乱れ　限り知られず

　という文だが。
（気持ちが乱れていることを着物の模様に例えてるから）

　春日野に生い出でた紫草のようなあなた方を見て、
この紫色のしのぶずりの狩衣の乱れ模様のように、
あなた方を恋いしのぶ心の乱れは限りも知られないほどです

（こうかな？　きっと春に芽を出した花みたいに……）

　春日野に生い出でたの後に若々しいをつけ加える。

（うん。これで）
　フレッシュさを表現できたような気がする。
　もう少し悩んでも良いが、時間がなくなる。次の問題に進もうとしたところでメイドさんが何個かどら焼きが並んだ大きな皿とと緑茶を運んできた。何も乗っていない小さなお皿が置かれ、湯呑から湯気を立てる。
「つぶあん、こしあん、生クリームあんこがあります」
　小声で問われ、桜は目を瞬かせる。3種類も用意してくれるとは思わなかった。
（明日はおせんべいが良いから甘いものを）
　そう考えて、
「生クリームあんこで」
「かしこまりました」
　トングで掴んだそれをお皿に乗せられる。メイドさんが去ってから、どら焼きを二口。
「……うん」
　甘みが染み渡るようだ。
　糖分を取ったせいか、少しは頭の回転が良くなったような気がする。
　この調子で残りのテストも快調に飛ばしていきたいもの。

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