クラフトチャレンジ☆ネコジマ｜リアクション

クラフトチャレンジ☆ネコジマ

　寝子電スタジアムの会場へ到着すると、すでに人だかりができていました。
　『クラフトチャレンジ☆ネコジマ』という楽しげなイベントに惹かれた人々にまざって、梓智依子と娘の梓も列に並びます。
「有休なんて、初めて使っちゃったわ」
　日曜日の今日、本当はアルバイトしているおもちゃ屋さん『ハローニャック寝子島店』でのシフトを入れていたのだけど、娘のたっての願いということもあり、お休みすることにしました。
　楓は、寝子電スタジアムに来るのも初めて。
「ママ、あれなにあれ！？」
　と興奮気味にぐいぐいと智依子の手を引き、
「ママ、すごいよ！　ちかくでみてみたい！」
　と突然あらぬ方向へ突撃したりするので、ママはちょっと大変です。
「楓、ママから離れないでね？」
「うん、だいじょうぶ！」
　あんまり信用できない「だいじょうぶ！」に苦笑いしてしまいます。
　会場にはいろいろなブースがあって、それぞれにモノづくりが体験できます。人気なのはＮＹＡＧＯブロックのジオラマづくりで、子どもたちだけでなく、おとなもいっしょに楽しんでいます。
「楓、ＮＹＡＧＯブロックはどう？　なんでも好きなものを作っていいんだって」
　と言ったところで、楓が別の方向を見ていることに気づきます。
「ママ、あれ！　きらきらしてるー」
「あ、本当、すごく綺麗。センサリーボトルっていうのね」
　どこにでもあるようなペットボトルに、カラフルなビーズやきらきらのラメ、好きな小物を入れてつくる、ちょっとしたインテリアだそう。「安らぎのジャー」とか「魔法のびん」などとも呼ばれていて、見る人の怒りを鎮めて心を落ち着かせる効果があるのだとか。
　確かに眺めているだけで、安らかな気持ちになってきます。
「楓、これ、つくってみたい？」
「うん！　ほしいー！」
　ぱあっ、と娘の顔が輝きました。
　さっそくブースに入り、用意されている材料を見繕って、テーブルで作業開始です。まわりには他の子どもたちもいっしょうけんめいボトルづくりに取り組んでいて、楓もなんだか、刺激を受けたみたい。
「楓はなにを入れるの？」
「えっとねー、これとね、これとねー」
　透明なペットボトルに、まずは洗濯糊を六分目くらいとぷとぷと入れたら、飾りを投入していきます。
　星の形に切り抜いたセロファンや、たくさんの色とりどりなビーズ、小さなお魚のフィギュアなどを次々に、楽しそうに入れていく楓。作り方に困った時は、智依子のやり方をじっと見つめて、見よう見まねでうまくこなしました。
　娘の成長を感じて、智依子はなんだか、胸が熱くなりました。
「あとは、お水を入れて蓋をすれば完成ね。楓、できる？」
「できるよー、そのぐらい……あっ」
　少しお水をこぼしてしまって、楓の顔が一瞬泣きそうに曇りましたが、智依子がすぐにささっとハンカチで拭い、事なきを得ました。
「できたー！！」
「綺麗にできたね、楓」
　完成したセンサリーボトルは、ふわふわと星が漂い、お魚が泳いで、夜の海みたいでとっても素敵。
「これね、これね、おじいちゃんとおばあちゃんにもみせるー！」
「うん、喜んでくれるわね、きっと」
　ぱあ、と輝く娘の笑顔。来てよかった、と智依子も笑みがこぼれました。

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