この道の続く限り｜リアクション

この道の続く限り

滝原レオンは、起きてすぐに心臓を握り締められるような圧迫感に襲われた。
「やっべえ寝坊ー！！！！？？？？」
　起きて壁の時計を見た瞬間、そう叫んでいた。
　枕元の目覚まし時計は止まっていた。恐らく電池切れだろう。
「くっそ、マジか」
　慌てて身支度をして、朝食も取らずに玄関を飛び出す。
　そこから全力疾走。
「あぁもう、なんで誰も起こしてくれなかったんだ！？」
後で学校で問いただしてやる…！と双子の妹の顔を思い浮かべつつ、ひたすら足を進める。
が。
「ぜえ、はあ、ぜえ、ひい…」
ものの数分で息が切れ、みるみるスピードが落ちていく。
「あのお、すみません」
「え」
　並走してきているのは腰が少し曲がったおばあさんだった。
「え、いや、ちょっ」
（嘘だろ……！？ここまで体力ねえのかよ俺……！）
「駅にはどうやって行くんですか？」
「え、駅？　この先のT字路を左に」
「ほぉ〜、ありがとうねぇ」
　おばあさんはスピードを上げて、右へ駆け抜けて行った。
「……えぇ……」
　確かにインドア派というか、あんまりアクティブに外で活動するタイプではないが。
「えぇい、頑張れ俺……！」
　そして、無事に校門を抜け、
「はあ、はあ、ぜえ、ぜえ…」
　なんとかギリギリのところで教室に滑り込み、崩れ落ちるように席につく。
まだ息が苦しい。肺が痛い、足がつっている気がする。
　近くの席のクラスメイトが本気で心配そうにしている。
「え、何、心臓発作？」
「過呼吸じゃね？」
「ちげーよ！　……やべえな……マジで……」
　今朝の一件で、自分の体力のなさを嫌というほど実感した。
「……始めるか……筋トレ……」
　せめてあのおばあさんに。
「いやいや、目標低いだろ」
　せめて人並みの体力はつけなければ。そう心に決めたのだった。

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