シャーク・オブ・ジ・アポカリプス｜リアクション

シャーク・オブ・ジ・アポカリプス

　神たる灰色猫、テオドロス･バルツァの呼びかけに応えた人間は総勢６人。
　知っている顔もいれば、知らない顔もある――リュックを背負った桜井ラッセルはこっそり顔を伺った。
　港でテオと合流し、＜海原の誇り号＞に乗船する。
「うぉ、でけぇな。プールあるよ、プール」
「ニュースに出てたの、分子標的治療薬で特許をとった柳川博士かな？　だったら、旅客船を用意できてもおかしくない」
　八神修の答えに、甲板にあるプールに目をやったラッセルは、浮き輪を見つけた。
「子供じゃぁ……ないな」
「サメ……じゃないの？　青いし、とがった背びれもあるし」
　隣に居た水上桜が言う。
「浮き輪？　サメなのに？」
　椎井莉鳥は解せないという顔だ。
「映画みたいにシャーッ！　て泳ぎじゃないね、お姉ちゃん」
「そうね、小さい子のよちよち歩きみたい」
　仙道姉妹が首を傾げる中、テオがスーツ姿の男性を連れて戻ってきた。
「おう、お前ら。よく来てくれたな」
「おぉ……６人も信じて下さったのですね。ありがたい。私は柳川公伸と申しまして、教授をやっております。そして、こちらが……さ、皆様にご挨拶なさい」
『え、えーと、初めまして……ボクはサメ乃助です。よろしくお願いします』
　浮き輪をはめたホホジロザメが、脳裏に直接話しかけてくる様に、桜は気が遠くなる思いだった。

（まったく、これだから『フツウ』って嫌なのよね）

「地球を守るため、共に戦おう。よろしくな」
『よろしくお願いします！』
　修と指切り（鰭切り？）をする姿は、丸々としたフォルムで体長も短い。大きな口に並ぶギザギザの歯は、つぶらな瞳と比べるとコミカルに見える。
　水族館でちびっ子が抱えている、巨大ぬいぐるみのようだ。
　各々自己紹介を終えた後、ラッセルが切り出した。
「その……隕石について、１つ提案があるんですが」
　彼の提案は『隕石を破壊するのはやめよう』というものだった。
「ＴＶ知識なんですけど、研究者が『壊すと欠片が降り注いで大惨事なので、早期に発見し、軌道を逸らして防ぎます』って言ってたの聞いた事あります。そうすれば、サメ乃助の危険だってずっと少なくできるし。どうでしょう、博士」
「な、なんという事だ……！　隕石が迫っていることですっかり混乱してしまって……サメ乃助が心配で、そこまで思いつかなかったよ。ありがとう、桜井くん！」
　握った手を上下に振っている柳川博士に、修が手を上げて発言をする。
「柳川博士、軌道を逸らすにしても、サメ乃助を守る防具が必要だと思うんです。柔軟で薄い皮を合わせて、中に鱗状のジュラルミンを繋ぐ鎧はどうでしょう？　インカムも内蔵できますし、知り合いの業者も手配可能です」
「そ、そんな物があるのかね！？　私はすっかり門外漢で……ありがとう、八神君！」
　修と握手した博士が、プールから顔を出したサメ乃助と抱き合っている様を見て、莉鳥が呟く。
「ふぅ、良かった。自然な流れで浮き輪を外す方向に持って行けたね」
「あぁ。なぜかは知らないが、どう考えてもおかしいだろう。エラ呼吸のサメに浮き輪なんて」
　一息つく修の言葉に、テオも含めた全員が頷いた。

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