それは、あなたがクレーンゲームで首尾よくサメぬいぐるみをゲットした日のことです。
帰路を辿りシーサイドタウン駅に向かって、ふと顔を上げた、その時でした。
「皆さん聞いてくれ! 今地球に隕石が迫っている!」
駅ビルにある、大型ディスプレイ。
ニュースを流していたそこに、スーツ姿の男性が乱入して叫んでいます。
「私は柳川という者だ。隕石は予測直径10メートルほどで、早ければ2週間、遅くとも一月以内には地球に……いやちょっと待ってくれ、隕石は本当に来るんだ! 私達だけでは、地球を守ることはとても……」
そこまで言ったところで、男性はTV局のスタッフに取り押さえられ、画面の外に消えてしまいました。
ディスプレイにはサンマの泳ぐ映像と『しばらくお待ち下さい』のテロップ。
ほどなくして画面はニュースに戻りましたが、あなたはそれどころではありません。
なぜなら、頭に
テオドロス・バルツァの声が響いていたからです。
「おい、お前ら! 隕石が来てるってのは本当だ! 落下予測地点は太平洋の……そうだな、イースター島の西あたりか。衝突すりゃあ津波はもちろん、半径3~4キロの生き物の全滅、土砂が舞い上がって氷期が来るかもな。そのせいか知らんが、今回は俺の世界を切り分ける力も、お前らを落下予測地点まで送る力も使えねえ!」
テオの言葉にあなたは息を吞みました。
今まで幾度となく寝子島を救ってきた、テオの力が使えない?
「現時点で隕石に対処出来そうなのは、柳川んトコにいる空飛ぶサメくらいだが……」
「うん! ボクがんばるよ! 泳ぐのあんまり得意じゃないけど、隕石を壊して地球を守るんだ!」
「コラっ! このサメ、俺に水をかけるんじゃねぇよ!」
「ねぇねぇ、ハカセはいつTVのお仕事から帰ってくるの?」
「だーっ、静かにしてろ!」
なぜか、テオのテレパシーに子供のような声が混ざっています。
「と、とにかく! コイツには外洋を泳ぐ力が無いときてる! いいか、寝子島を守りたい奴は港まで来い! 頼んだぞ!」
テオの声を聞き終えたあなたは、スマホで『隕石』について調べてみました。
――天体の衝突によって舞い上がった塵が、太陽光を遮ることによって起こる寒冷化を隕石の冬と呼び――
――白亜紀末の天体衝突が恐竜の絶滅を引き起こしたと、地質学者、古生物学者の間で支持されており――
――欧州ニャングース地方の場合は、空中で爆発した隕石が周囲50キロの森林を焼き尽くし――
~フリー百科事典ニャキペディア~
どう考えても愉快なことにはなりそうもありません。
泳げない空飛ぶサメなんて、何のことだか全く分かりませんでしたが、あなたは港に行くことにしました。
島が無くなってしまったら、クレーンゲームどころではありませんからね。
皆さまこんにちは。陣 杏里です。
この度は、サメの出てくるアニマル感動ものシナリオをお送りします。
シナリオ概要
唐突ですが、地球に隕石が迫っています。
大学教授の柳川公伸博士が接近を察知して警告しましたが、誰も信じてくれません。
ガイドの通りテオの力も使えないので、隕石を撃退できそうなのは博士のところにいるサメ――サメ乃助だけになりそうです。
隕石のことを察知したのも、実はサメ乃助なのですが。彼の存在を公にしたくない博士は、隕石接近をうまく伝えることができませんでした。
▼サメってどんな?
サメ乃助は、遺伝子学の権威である柳川博士が、技術の粋をこらして創造した人工生命です。人語を解し、空を
飛び、念力も使えるハイパーなシャークです。
しかし、ちょっとした手違いでぬいぐるみのような丸っこい姿をしています。
……なので、他の流線型のサメのように、びゅんびゅん素早く泳げません。
博士は「早く泳ぐことだけがサメじゃないさ」と励ましていますが、やはり心配なのか、サメ乃助に浮き輪をはめ
させています。……サメはエラ呼吸なのですが。
サメ乃助は特に不思議に思うこともなく、念力でエラ周りに水を循環させて呼吸しています。
話のながれとアクション
『サメ乃助、柳川博士と協力して地球に迫る隕石を破壊する』ことが皆様の目的となります。
博士を慕っているサメ乃助は、自分が体当たりで隕石を壊すことに乗り気ですが、いかにハイパーシャークといえど
怪我ではすまないかもしれません。
どうかお力添えをお願いいたします。
① サメ乃助&柳川博士と共に船に乗り、イースター島近海に赴きます。
船と乗組員は博士が手配してくれますが、途中で他のサメやシャチ、大イカに襲われる危険性は捨てきれ
ません。
② 道中、サメ乃助は泳ぎの特訓をするので、励ましたり、泳ぎを教えたり、仲良くなったりできます。
③ 落下地点に到着したら、空を飛ぶサメ乃助が隕石に体当たりし、念力との合わせ技で破壊します。
<アクションの一例>
・イースター島近海に行くのに船長が必要ですって? オーッホッホ、ワタクシにお任せなさい。
・腹が減ってはなんとやらって言うよな! 俺を料理人として乗せてくれたら毎日うまいもん作ってやるぜ!
・泳ぎの苦手なサメ乃助に、水泳部の私がレクチャーしてあげるわ! と意気込んで乗り込む。
※上記は一例ですので、どうぞご自由にお考え下さい。船旅を楽しみたい方も歓迎です。
NPC紹介
・柳川公伸(やながわきみのぶ)
遺伝子学の世界では名を知られた権威です。交通事故で妻子を亡くしたショックから、息子の好きだった
サメ(空飛んでしゃべれる)を作り出してしまいました。実の子供のように可愛がっています。
普段は頭の切れるイケオジですが、サメ乃助のこととなると、いささか言動がポンコツになるようです。
・サメ乃助
ホホジロザメをベースに、遺伝子改造されたハイパーシャークです。テオと同様に、頭の中に直接しゃべります。
生みの親(?)である柳川博士のことは「ハカセ~」と呼んで慕っています。
ずっと柳川邸のプールで育ってきたので、外の世界のことはあまり知りませんでしたが、最近TVを見ることを
覚えました。他のサメを見て「サメはしゃべらないの?」と驚き、博士に「同じサメ同士だもの。きっと友達に
なれるさ」と言われ、外海に出るのを楽しみにしています。
マスターコメントは以上となります。
秋の船旅、どうぞふるってご参加下さいませ!