紅葉舞うあやかし温泉｜リアクション

紅葉舞うあやかし温泉

　乱蘭・フローレンスは、褐色の美少女ですが幽霊でした。
　足もあり、永遠の２０歳を名乗っています。
「人間、温泉、好き！　なら幽霊も好き、当然♪　死んでたって入りたい、当然♪」
　そんなことを口ずさみながら、霊界線で現世でいうと九夜山にあたる浅縹駅にやってきました。
「できますぜ！　霊界で！　霊界旅館の浅縹温泉でござい！」
　スマホを構えて、お肌つやつやの従業員に向けました。
「霊界なんで従業員は勿論あやかしです！　こちら女将さん。いえーいぴーすぴーす」
　スマホのカメラでパシャリと一枚。
「あら、人とは思えない妖しい美しさだなんて、おほほ」
「……言ってないよ！？　温泉のアピールポイントどぞー」
「こほん。うちの温泉は秘湯で、めったに人が立ち寄らないのが自慢です。特にこの季節は、お湯に映る紅葉が絶景です」

　そんな茶番を経て、乱蘭は早速風呂に入ることにしました。
「拙者堂々全裸入場す。タオルを湯船につけてはいけないが肌襦袢で入ろうとする幽霊はマナーとしてはどうなんでしょ」
　ちょうど肌襦袢姿の幽霊を見かけて、乱蘭がつぶやくと。
「お客様、着物をお預かりいたします」
　着物姿のおばあさんが現れて、幽霊から着物をはぎ取ろうとしています。
「あれ～、恨めしや」
　着物をはがれた幽霊は顔を隠してどこかへ消えてしまいました。
「奪衣婆は従業員だった？　あ、ちなみに混浴のほうです広いし人がおっても邪魔にならんでそ幽霊なんで」
　
　乱蘭は先客のいない露天風呂につかり、気持ちよさそうにつぶやきます。
「はー霊界霊界。極楽極楽だと浄化してるし、地獄地獄は失礼でござる。入った途端昇天しちゃう御老体もおるのでしょな」
　湯煙漂う温泉を乱蘭は見回しますが、どうやら人の姿はありません。
「人おらんし温泉広いしいっちょかましますか」
　あおむけになって体を伸ばし、お湯に浮かびます。
「美少女の土左衛門。おっぱいの双子島、なんてな」
　すると、湯の脇に立っている樹の一本がざわざわ枝を動かし始めました。
「おや、ところであの樹もあやかしでござる。こんなところに立ってるんだからただの助平かと」
『ただではない』
　ザザッ！
　枝が動くと、一斉に紅葉が乱蘭を襲いました！
「グワーッ木の葉乱舞！　乙女の乳尻太腿を揉み込んだり！」
　体に張り付いた木の葉の感触に、乱蘭は思わず身をよじります。
「これは！　性感マッサージ！　なんて技術だ！　この後いやらしい触手でワーオするんすね！　エロ同人のように！」
『……いろいろ身も蓋もないのう。もっとセクシーな反応してくれんかの』
「サーセン」
　なんとなく謝ってしまった乱蘭、目を剥いて体をつっぱらせビクンビクン、と体を動かします。
「湯けむり殺人事件。いやもう死んでますが」
『……猟奇的な反応じゃな』
「このように美少女汁吸ったりするんすね助平ですねぇ！」
『待て。木の葉はちゃんと効用があるのじゃ。紅葉だけに』
「肩腰に貼ればちゃんとマッサージになる？　ホントだ！」
　ちゃんと紅葉を肩に貼った乱蘭は、日ごろの疲れを癒したのでした。

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