紅葉舞うあやかし温泉｜リアクション

紅葉舞うあやかし温泉

　寝子高２年の春名あきらは、温泉の噂を聞いて九夜山にやってきました。
「涼しくなってきたらやっぱ温泉やなぁ。お湯も紅葉もじっくり楽しもっと！」
　さっそく服を脱いで、ゆるウェーブポニテの上にタオルを載せて温泉に浸かります。
「ええ湯加減や……霧の中、紅葉、温泉……めっちゃええ雰囲気やわぁ。今日はここでゆっくり疲れと凝りをとって……」
　のんびりと健康的な瑞々しい体を伸ばしリラックスします。
「……ん？　何か変な木があるなぁ？」
　周囲は同じような紅葉の樹に囲まれていて、なぜその木を変だと思ったのかはあきらにもよくわかりませんでした。

「まあええか……」
　のんびりしたあきらは、あまり気にすることなく目を閉じ、温かい湯を楽しみます。
　ちょうどいい湯加減のお湯の中で、次第にうとうとし始めましたが。
「……ひゃっ！？」
　異変に気付いて目を開けました。
「何か触られたような……」
　胸の敏感な部分を撫でられたような気がしたのですが。
　しかし周囲には誰もいません。
「気のせいか？」
　お湯には紅葉が一枚浮かんでいました。
「なんや、これが触れたんか？」
（しかし葉っぱとは思えない感触やったけど、気のせいか……？）
　と思い直し、また目を閉じましたが。
「わ、またや！」
　今度はお尻のあたりを触られている感触を感じ。
　振り向けば今度はお尻のあたりに、紅葉が一枚貼り付いていました。
「どーも気のせいとはちゃうみたいやなぁ」
　口には出しませんでしたが、その感触は。
（……なんや温泉とは別の意味で気持ちええし）
「ちょっと移動してみよ」
　葉っぱを避けるため、あきらは場所を移動してみることにしました。
「お湯の中を移動してみたり、お湯から出てあちこち行ってみたりしたら原因が分かるんかなぁ？」
　
　他の場所で落ちてきた葉っぱはただの葉っぱで、怪しいことは起こりませんでした。
「正体、わからんなあ……」
　結局あきらは、最初の場所に戻ってきていました。
　再びお湯につかると。
「あ……やっぱり」
　その樹から落ちてきた葉っぱだけが、体につけると気持ちよく撫でまわされる感触になるのでした。
「不思議やな」
　お湯から上がっつたあきらは、人がいないのをいいことについついそれで遊び始めてしまいました。
（こう、見えたらあかんとこ隠すみたいに貼ってみたり……）
　さらに舌を出してその上に乗せてみたり。
「あっ……気持ちええ……」
　いつの間にかあきらは、知らないうちに引き寄せられるようにさっきの木のそばにやってきていて。
　裸のままその幹に密着していました。
「あっ……」
　幹はなんだかじっとりと濡れていて、葉っぱのついた枝が垂れ下がってきて、あきらのあちこちに触れ……
「あっ、あかん……」
　それはもうドキドキで、あきらの体はたいへんなことになって……。

　……気が付いたら、お湯の中にいました。
「夢、やったんやろか？」
　けれど気持ちいい感覚が、体のそこかしこに残り。
　心地よい気だるさがあきらを包んでいるのでした。

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