ヒカリの雨の降る街で｜リアクション

ヒカリの雨の降る街で

「まだ、終わってなかったようですね」
　前線に来ることの無いシオが、荷物を抱えてやってきた。とはいえ大きな建物の影になっている場所から移動すること無く、補給要員である立ち位置は変わらない。
　それから契約違反者はいないだろうかと目を光らせ……装備を剥ぎ取る対象の発光体がいないことにホッとする。
（怖いものは生きてる人間ってね）
　装備品も無尽蔵ではないので、受け渡しの時に契約が盛り込まれている。『譲渡依頼受理し発光体化後、本体と装備確保が前提』と。
　破損紛失のほうが多いこともあるが、発光体化してしまった場合は落とし穴にでも落として弱体化後、譲渡した装備品はシオの元へ返却する契約だ。無慈悲なことなどしていない。
（さてと。じゃあ見ているだけでもつまらないですし）
　自走式のおもちゃで撹乱してみようか、そこに激辛調味料でも乗せてみようか。小さな店でも広げるかのごとく荷物を並べていると、そこにタイヨウのカケラが落ちていた。
「タイヨウでひなたぼっこをしたいものだね」
　それも、もうすぐ叶うだろうか。仲間の無事を祈るように、シオはカケラを優しく手のひらに包んだ。

「コアが、何かに反応してる！」
　まだ弱い。けれど確かに温かさが増した。
　莉鳥の声にシオはふと手の中を見やる。そういえば、カケラの割に温かいかもしれない。
「カケラも元々はタイヨウだ、コアを直す力があるかもしれない！」
　張り上げた修の声に、レジスタンスは希望を探す。ちっぽけなカケラひとつだって、集まれば、きっと！
　落ちている物を探す者、たまたまポケットに入っていた者。見付けたカケラに願いをこめて握りしめる。
（お願いだ……！）
　近くにカケラが見当たらなかったあおいは、ヒカリが差し込まないのを確認して手袋をとった。
　必死に祈る修の手の上から重ねるようにして、同じようにカケラへ祈りを捧げる。するとコアは、また微力ではあるが輝きを取り戻した。
「タイヨウの力が弱いなら……私の力を分けてあげればいいのかなって！」
　思えば、安全な場所から離れないシオも素手でカケラに触れている。
「椎井、素手だ！　手でコアに触れてみてくれ！」
「わかった！」
　ヒカリと違った眩しい光。
　暗い蛍光ペンキのようなチカチカするヒカリではなく、多数の色を含んだキラキラした輝きが辺りを包む。
　コアがゆっくり浮上すると発光体はうずくまり、曇り空ばかりだった寝子島の上空に亀裂がはいった。見たことも無い爽やかな青が、広がってゆく。
「雨が……」

　不透明のペンキのようだった雨は、小さな虹を映した雫となる。
　あちこちにあったペンキだまりは水鏡のように、周囲の景色を写し始めて。
　寝子島に――優しい光の雨が降り注ぐ。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希／津軽無色
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みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。

津軽無色マスターのリアクションを期待されていた方には申し訳ありません。
同じような世界観は難しいですが、普段挑戦しないジャンルなので、大変楽しく書かせて頂きました。
みなさまも、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。

ご意見ご感想、もしくは「読んだよ！」の代わりにダイヤリーのページチェック入れて頂けると、めちゃくちゃ喜びます。
お時間ありましたら、よろしくお願いします！

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