旬のサンマは生きがいい｜リアクション

旬のサンマは生きがいい

●地上で行う漁

　三折部朝衣は何の前触れもなく、いきなり寝子ヶ浜海岸に呼び出された。

「こんな風の強い日になんなのよ」

　朝衣は髪をおさえながらぼやいた。サンマさんによると『サンマ漁』が始まるらしい。

（漁ってことは船に乗るの？）

　しかし漁で使うような船は見当たらないし、それらしいものが向かってくる様子もない。疑問に思う彼女の耳にサンマさんの言葉が届く。

「おいでなすったぜ～！」

　彼の指し示すほうを見ると、サンマがこちらにやってきていた。両手両脚が生えており、身長を２メートルは超えたマッチョサンマたちだ。朝衣はその珍妙なサンマの大群に面食らった。
　あれを倒すと普通のサンマになるらしく、地上で漁をするようだ。

（……いや、地上で漁って何？）

　思わずツッコミを入れたくなってしまう。
　それはともかく、このサンマたちをやっつけいないと面倒なことになりそうなので朝衣も参戦する。
　彼女が用意したのは金属バット。一旦現場を離れてスポーツ用品店で買ってきた。最初からマッチョサンマが来ると知っていたら事前に準備できたかもしれない。
　とにかく襲い掛かってくるマッチョサンマたちを片っ端から叩きのめす。しかし見た目に反して機敏なうえに好戦的なので苦戦を強いられる。だが他の人たちと協力しつつ、マッチョサンマを確実に仕留めていく。
　そうして倒していくと、だんだん突撃してくるサンマの数も減っていき、やがてサンマラッシュは収まった。

「ふぅ……やっと終わった」

　疲れた体を休ませつつ、彼女はふと思いつき、婚約者である住沢遥人に連絡する。
　彼はシーサイドタウンの洋食レストランのシェフなので、サンマの調理をお願いできないか頼んでみた。サンマ漁の話をすると不思議がっていたものの、快く了承してくれた。ほどなくして彼が海岸にやってきた。

「すごいサンマの量だね、料理のしがいがある」
「どれも新鮮なものよ」
「海岸で漁をした話はまた後で聞かせてほしいな」

　軽く会話を交わすと、彼はさっそく調理に取り掛かる。
　朝衣も下ごしらえなどを手伝い、サンマのガーリックオイル煮、サンマのカルパッチョ、サンマのアクアパッツァ、サンマの香草焼き、サンマのフライ、サンマとジャガイモの重ね焼きなどの料理を作ってもらう。

「んー、おいしい」

　朝衣は数々の料理に舌鼓を打った。

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