台風襲来！｜リアクション

台風襲来！

▲猫鳴館、嵐の前

「寝子島に超強力台風が直撃……！」
　１年生の月原想花は、スマホの天気予報を見て唖然とした。
「これって……猫鳴館消滅の危機？」
　桜花寮に入る筈が、手続きミスで猫鳴館へ入る羽目になった想花。
　あまりのボロさに最初はショックを受けることも多かったが、住めば都、最近はなんやかんやでここでの生活にもなじんでいた。
（しかし素人目にもよく保ってるなあと感心せざるを得ないこのボロい建物、普通の台風（？）でも崩壊しそうなのに……）
　超強力台風が来た日には宇宙まで飛ばされるんじゃないか、と思える。
「ていうか、猫鳴館が吹っ飛んだら自分はどこに住めばいいんだろう？　どうしよう……」
　これはさすがにヤバい──と思った時。
「何してるんだ、心配する暇があるなら手伝え！」
　先輩に半ば強引に動員されてしまった。
（まあ、一応自治会員だししょうがないかな……）
　とりあえず道具を持って、先輩の後を追い可能な限りの応急処置を行うこととなった。

「台風が来るから準備をしないと！」
　寝子高３年の綾辻綾花は慣れたもので、さっそく猫鳴館の雨漏り対策に動き出す。
「ブルーシートが足りないんですね。私、追加で買ってきます」
「気をつけろよ」
　綾花は傘を手に駆け出して行った。

「ええと、僕は何をすれば……」
　あたふたする想花に、先輩が説明してくれた。
「まず窓ガラスにガムテープを×印に張り付ける。これで割れにくくなるし、何かにぶつかって割れても破片が飛散しにくくなる」
「そうなんだ……」
　当然猫鳴館は強化ガラスなど使われていない。
　想花はおぼつかない手つきながら一生懸命テープを貼った。
　いつ壊れても不思議はない猫鳴館、ガラスの破片でケガなどしては目も当てられない。
「それから館の表にあるものは可能な限り室内にしまい込む」
「は、はい！」
（吹き飛んだりして猫鳴館に直撃でもしたら、それによる損傷が原因で崩壊しかねないもんね……）
　物干しざおや植木鉢など、危険そうなものをどんどん中へしまっていった。

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