台風襲来！｜リアクション

台風襲来！

▲二人で避難

　ホームセンターで無事ブルーシートを買った綾花だが、思いがけない人と出会った。
「珪先生！」
　担任の早川珪先生である。
「綾辻さん。こんな天気の中出会うとはね」
「もうすぐ台風が来るみたいですね。猫鳴館の雨漏り対策しててブルーシートが足りなくなったから追加で買いに来たんです」
　寮を出た時より風も強くなってきたようで、風で捲れそうになったスカートを慌てて押えた。
「猫鳴館か……それは大変だね。大丈夫？」
「……はい。急がないと危ないですね。珪先生は何か買いに来たんですか？」
　珪先生も台風の準備かな？　と綾花は思う。
「ああ、電池を切らしてしまってね」
「停電が心配ですよね。先生の家は大丈夫ですか？」
　もっとも、猫鳴館より危ない建物は無いとは思うけれど。
「僕のアパートはそんなに古くはないけど、家の前に水が溜まりやすくてゴミ出しが大変だったりはするかな……風が強くなってきたね」
「そうなんですね、今から寮に戻るのは危険かも……きゃ！」
　強風に煽られ、飛ばされそうになって、慌てて綾花は珪先生の腕を掴んでしまった。
「大丈夫かい？」
「……は、はい。ありがとうございます」
「ここは危ないな」
「近くの建物に避難して台風が通り過ぎるのを待ちましょうか。珪先生も一緒に避難しませんか？」
「そうだね……」
　珪先生は綾花を気づかわしげに見やった。
「速度が早いから通り過ぎるのも速いはずです。先生がこの台風で怪我されたらと思うと心配になっちゃいます」
「僕はともかく……そうだね、避難しようか」
　二人は近くのビルに避難することにした。

　綾花はスマホを取り出し天気予報を確認する。
「スマホで確認したら２時間ぐらいで通り過ぎるみたいです」
　ガン！
　外から聞こえる大きな音にビクッと身をすくめた綾花は、窓から外を見る。
「ゴミ箱がぶつかったみたい。あっ、瓦まで飛んできてます！」
　ガチャン！
　壁にぶつかり瓦が割れたらしい音がする。
「早く通り過ぎないかな……そうだ」
　綾花は鞄に手を入れると、お菓子を取り出した
「珪先生、半分こしましょう」
「いいのかい？　ありがとう」
　綾花が袋から出したお菓子を食べるのを見てから、珪先生もお菓子を口に入れた。
「食べ物があるとなんだか安心するね」
「小さい頃は台風が来たらわくわくしてたんですけど」
「ああ、僕もそうだった気がする。風で傘が逆さになりそうだったり、校庭が池みたいになったり……見慣れた日常が非日常になるからかな」
「先生もそうなんですね……今は被害がないか不安です」

　台風が通り過ぎるまで、二人は話をして過ごした。

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