がんばった、あなたへ｜リアクション

がんばった、あなたへ

●感謝の気持ち

　水上桜は自室でメモ帳を広げて悩んでいた。

「先生へのプレゼント、何が良いかな」

　先生とは家庭科の白沢絢子先生のことだ。偶然、絢子先生が今年で教師生活30周年だと知った桜。普段から家庭科同好会で家庭科室を使わせてもらっていることもあって、感謝の気持ちを込めて何か役立つものを作ろうと思った。
　メモ帳には色々な候補が書き込まれていた。そのなかから実際に受け取った時に役に立つか等も考えて、エプロンとミトンを作ることにした。

「これなら製菓部で実習がある時なんかに使えそうだし」

　作るものが決まり、桜は桜花寮の自室でそれらを作り始めた。先生が好みそうな色やデザインなどを思い浮かべつつ、何枚かスケッチを描く。それらを比べてみて、ピンときたものを選ぶ。

「これを作るには、この型紙かな」　　

　桜はネットで型紙などをダウンロードし、おおまかな形だけ把握した。サイズがちゃんと合っているか心配だけれど、絢子先生に直接聞くわけにもいかない。作る過程で微調整するしかないだろう。桜はカレンダーに目をやる。今日１日で完成させることはできないので、これからの日程を計画する。

「平日は授業や同好会、水泳部、それに生徒会があるから少しずつ進めて、日曜日に一気にやろう」

　この計画をもとに、平日は自分の隙間時間を利用して普段行く素材屋などを巡って必要な材料を集めたり短時間で済む作業を重点的に終わらせた。そして日曜日に、残しておいた大きめの作業を一気にやる。そうしてどうにかエプロンとミトンが出来上がった。

「あとはこれを袋にいれて包装すれば完成」

　桜は満足そうな顔をしていた。翌日の放課後、桜は絢子先生のもとへ向かう。

「あら、水上さんこんにちは」
「こんにちは」
「なにか質問かしら？」
「いえ、今日はこれを渡したくて来ました」

　そう言って桜は包装したプレゼントを取り出した。

「先生、教師生活30年おめでとうございます。30年間ご苦労様でした。そしてこれからもよろしくお願いします！」
「あらあら、ありがとう」

　絢子先生は嬉しそうに目を細めた。

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