モフモフ☆ドリームビーチ｜リアクション

モフモフ☆ドリームビーチ

●すべては焼肉のために

　落合まゆらは同じ学校に通う友人たちと寝子ヶ浜海岸へ遊びに来た。ヒョウ柄の水着を着用し、夏を、海を満喫するつもり満々だ。海岸では『モフモフ☆ドリームビーチ』が開催されているのもあって人々で賑わっている。

（今日くらいは息抜きしたいわね）

　彼女は寝子島アニメーション学院の声優科に通っている。最終学年で、卒業後に所属する声優事務所のオーディションを色々と受けている最中。その結果が気にならないと言えば嘘になる。

（結果はいずれ遠からず出るわけで、それが不安で仕方がない。だけど悩んでも仕方がないよね）

　卒業後はどうなるか分からない。それは自分だけでなく、今来ているメンバーも同じ。お互いに本格的な活動を始めたら忙しくなって会えないかもしれない。それなら今できることを一緒に楽しもうと思った。

（そうとなれば、『アレ』はやりたいわね）

　彼女の視線の先には『モフモフ☆ドリームアスレチック』と名付けられたアスレチックコースがあった。これはクリアタイムを競うもので、優勝すると焼肉店『猫寿』の１時間食べ放題券がもらえる。今夜の食事目当てに友人たちと相談して参加することにした。
　ただチーム参加の場合、１人でも脱落したら全員失格なので否が応でも緊張する。

（でも焼肉のために頑張る！）

　気合を入れると全員でスタート地点に立った。
　最初は丸太渡り。横からは送風機で強風が吹き荒れる。これではダラダラ渡っていてはバランスを崩して転倒するし、不安定で恐怖に身がすくむ。

（それなら……）

　彼女はゆっくりと丸太に足を掛けてゴールだけを見つめて進む。可能な限り下は見ず、風に煽られても気を取られず、ただただゴールを目指して足を動かす。その次のにゃんこジャンプではタイミングを捉えてフックを掴まなくてはならない。その次のにゃんこスライダーのことも考えると、しっかり握りたい。

（これは勘で勝負するしかない）

　彼女はトランポリンの上で何回も跳ねる。そして見極めたところで大きく弾むと、体が宙にふわっと浮く。すかさず手を伸ばしフックを捉えた。掴んだフックが斜面をスライドして滑走する。

（ここは耐久勝負……！）

　余計なことに気を回すと落ちてしまいそうだ。終着点まで、ひたすら焼き肉のことだけを考える。なんとかにゃんこスライダーを滑り終えた先には絶壁クライミング。さらに先にはスーパーパンチマシンが控えており、それらを気合で攻略した。
　疲れ切った一同はゆっくり水分補給をしながら息を整えていた。結果は暫定１位。あとは結果を見守るしかない。

「あっ……！」

　最後の参加者がゴールにたどり着き、タイムが表示される。僅差でまゆらたちが優勝した。

「やった！」

　全員の表情がぱあっと明るくなる。
　体力も戻って来たまゆらたちは海岸での時間を満喫した後、焼肉に直行した。

このページにイラストを設定する