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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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＜転生＞ あなたの傷を治したい
●新人賢人の恥じらい
街を襲ったドラゴンは強敵だった。
「後ろっ！」
撃退任務にあたっていた新人賢人（メイガス）の綾辻 綾花が、背を預けていたベテラン魔銃士（へクススリンガー）の早川 珪の声に振り向く。
背後からドラゴンが牙をむき出しにして迫って来ていた。
迂闊だった。
（躱せる……ううん、だめ。私が避けたら珪さんに攻撃が当たってしまう）
彼を守りたい。一瞬の迷いが、反応を鈍らせた。
ドラゴンが放った衝撃波が綾花を切り裂く。
「ッ……、この程度でやられはしませんっ。反撃させていただきます！」
「雷よ轟け、炎よ舞え！」
新人とはいえ賢人。複数の魔法を操るすべは心得ている。
魔法書片手の詠唱で放たれた雷と炎は、紙縒りのように鋭く縒り合わさり、矢となってドラゴンを穿った。
呼吸を合わせ、珪の銃が二発、三発と火を噴く。
とどめを刺されたドラゴンは、力なく羽根をしならせ回転しながら落ちて行った。
「あとは仲間におまかせで良さそうですね」
安堵の息をはいた途端、急に力が抜けて傷が痛んだ。
「大丈夫かい」
崩れ落ちそうになった体を珪が支える。
「これぐらいの傷、何でもないです」
「何でもなくないだろう。血まみれじゃないか。座って」
脇の下に腕を回して支えられ、ゆっくりとその場に座らせられる。
すこし動くだけでも傷口が開く感触があって痛む。
「僕を庇ったせいで」
「そんな顔しないでください。珪さんが無事でよかった……私、守れたんですね」
「嬉しそうな顔をしてもだめだよ。本当は僕がきみを守るべきだったんだ」
「いいんです、いつも守られているから。たまには私だって守りたいんです」
彼が心配しないように、痛みを堪えて笑顔をつくる。
珪は困ったように息をはいて笑んだ。これ以上議論しても仕方ない、それよりすべきことがあると、綾花の血まみれになった上着を脱がせる。
「え、な、なんですか？ こんなところで……！？」
「なんですか、って何を考えているの？ 傷を手当てしないと」
「あ、そ、そうですよね……って、自分で出来ます」
綾花は慌てた。
傷は太ももから腰、右肩にかけてだ。
血はまだ止まらず思ったより傷は深そうだが、男性の目に晒すのは恥ずかしい場所だ。
「薬草持ってますし、ちょちょいと貼れば……いたたた……」
「ごらん、利き手が上がらなくてだめでしょう。僕がやるからじっとしていて」
「はい……」
しゅんとして身を任せる。
珪は綾花の服を裂いて、傷ついた肩も太ももを露わにし、薬草を宛てて包帯を巻きつけた。
流石ベテランへクススリンガー。手つきが慣れている。
珪の手が包帯を巻きやすいように腕を持ち上げたり脚をずらしたりする。
「ごめん、もうすこし服を破くね」
肩の傷に包帯を巻くには胸のあたりまで露わにする必要があり、珪はそれを実行した。
彼は綾花の胸のふくらみを見ても動揺したり照れたりしている様子はない。あくまで治療と割り切って、陶器のつぼでも触るような丁寧かつ感情を含まない手つきで包帯を巻いていく。
だが綾花のほうは簡単には割り切れなかった。治療してもらっている。それは分かっている。
（だけど、む、胸っ……見られて……っ。恥ずかしくてドキドキが止まりませんっ）
早く終わってほしい。
ずっと続いてほしい。
相反する願いを抱えて綾花は頬を染めた。
「……はい、おしまい」
包帯を巻き終えると、珪は血まみれの綾花の上着ではなく、自分の上着を羽織らせて、しっかり前ボタンを留めてくれた。服を破いてしまったからそのままでは帰れないとの配慮だろう。
「立てるかい？」
「はい、大丈夫……痛っ」
「肩を貸すよ」
「珪さんも疲れてるんですから本当に大丈夫です」
「きみね。僕たちはパートナーだってこと忘れてるでしょう。いっしょに宿に帰るまでが任務だよ」
「そんな……『家に帰るまでが遠足です』みたいなことを」
「『バナナはおやつに入りません』」
「ふふっ」
軽口を言い合うと気持ちも軽くなってきた。
珪は綾花の脇の下に自分の肩を入れるようにして立ち上がらせた。
歩くとまだ痛むが、ゆっくりなら歩けそうだ。
（傷が治らなかったら……珪さんにお嫁さんにしてもらおうかな……）
「何か言った？」
「え、今の聞こえてました？」
心の声が口から出てしまっていたようで綾花はあたふたする。
「冗談ですからっ」
珪はにこっと笑んだだけだった。
「宿に戻ろう。他の仲間も戻っているかもしれない」
「……はい」
帰ろう。今は甘えて。少し眠って。それから食べて。傷を癒そう。
街を襲ったドラゴンは強敵だった。
「後ろっ！」
撃退任務にあたっていた新人賢人（メイガス）の綾辻 綾花が、背を預けていたベテラン魔銃士（へクススリンガー）の早川 珪の声に振り向く。
背後からドラゴンが牙をむき出しにして迫って来ていた。
迂闊だった。
（躱せる……ううん、だめ。私が避けたら珪さんに攻撃が当たってしまう）
彼を守りたい。一瞬の迷いが、反応を鈍らせた。
ドラゴンが放った衝撃波が綾花を切り裂く。
「ッ……、この程度でやられはしませんっ。反撃させていただきます！」
新人とはいえ賢人。複数の魔法を操るすべは心得ている。
魔法書片手の詠唱で放たれた雷と炎は、紙縒りのように鋭く縒り合わさり、矢となってドラゴンを穿った。
呼吸を合わせ、珪の銃が二発、三発と火を噴く。
とどめを刺されたドラゴンは、力なく羽根をしならせ回転しながら落ちて行った。
「あとは仲間におまかせで良さそうですね」
安堵の息をはいた途端、急に力が抜けて傷が痛んだ。
「大丈夫かい」
崩れ落ちそうになった体を珪が支える。
「これぐらいの傷、何でもないです」
「何でもなくないだろう。血まみれじゃないか。座って」
脇の下に腕を回して支えられ、ゆっくりとその場に座らせられる。
すこし動くだけでも傷口が開く感触があって痛む。
「僕を庇ったせいで」
「そんな顔しないでください。珪さんが無事でよかった……私、守れたんですね」
「嬉しそうな顔をしてもだめだよ。本当は僕がきみを守るべきだったんだ」
「いいんです、いつも守られているから。たまには私だって守りたいんです」
彼が心配しないように、痛みを堪えて笑顔をつくる。
珪は困ったように息をはいて笑んだ。これ以上議論しても仕方ない、それよりすべきことがあると、綾花の血まみれになった上着を脱がせる。
「え、な、なんですか？ こんなところで……！？」
「なんですか、って何を考えているの？ 傷を手当てしないと」
「あ、そ、そうですよね……って、自分で出来ます」
綾花は慌てた。
傷は太ももから腰、右肩にかけてだ。
血はまだ止まらず思ったより傷は深そうだが、男性の目に晒すのは恥ずかしい場所だ。
「薬草持ってますし、ちょちょいと貼れば……いたたた……」
「ごらん、利き手が上がらなくてだめでしょう。僕がやるからじっとしていて」
「はい……」
しゅんとして身を任せる。
珪は綾花の服を裂いて、傷ついた肩も太ももを露わにし、薬草を宛てて包帯を巻きつけた。
流石ベテランへクススリンガー。手つきが慣れている。
珪の手が包帯を巻きやすいように腕を持ち上げたり脚をずらしたりする。
「ごめん、もうすこし服を破くね」
肩の傷に包帯を巻くには胸のあたりまで露わにする必要があり、珪はそれを実行した。
彼は綾花の胸のふくらみを見ても動揺したり照れたりしている様子はない。あくまで治療と割り切って、陶器のつぼでも触るような丁寧かつ感情を含まない手つきで包帯を巻いていく。
だが綾花のほうは簡単には割り切れなかった。治療してもらっている。それは分かっている。
（だけど、む、胸っ……見られて……っ。恥ずかしくてドキドキが止まりませんっ）
早く終わってほしい。
ずっと続いてほしい。
相反する願いを抱えて綾花は頬を染めた。
「……はい、おしまい」
包帯を巻き終えると、珪は血まみれの綾花の上着ではなく、自分の上着を羽織らせて、しっかり前ボタンを留めてくれた。服を破いてしまったからそのままでは帰れないとの配慮だろう。
「立てるかい？」
「はい、大丈夫……痛っ」
「肩を貸すよ」
「珪さんも疲れてるんですから本当に大丈夫です」
「きみね。僕たちはパートナーだってこと忘れてるでしょう。いっしょに宿に帰るまでが任務だよ」
「そんな……『家に帰るまでが遠足です』みたいなことを」
「『バナナはおやつに入りません』」
「ふふっ」
軽口を言い合うと気持ちも軽くなってきた。
珪は綾花の脇の下に自分の肩を入れるようにして立ち上がらせた。
歩くとまだ痛むが、ゆっくりなら歩けそうだ。
（傷が治らなかったら……珪さんにお嫁さんにしてもらおうかな……）
「何か言った？」
「え、今の聞こえてました？」
心の声が口から出てしまっていたようで綾花はあたふたする。
「冗談ですからっ」
珪はにこっと笑んだだけだった。
「宿に戻ろう。他の仲間も戻っているかもしれない」
「……はい」
帰ろう。今は甘えて。少し眠って。それから食べて。傷を癒そう。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2022年06月03日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年06月10日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2022年06月10日 11時00分
