this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
初顔合わせのサマーソング
<< もどる
1
2
3
4
椎名がふたりを案内したのは、九夜山をのぞむコテージだった。今夜はここに宿を取ったという。観光シーズンゆえ予約で埋まっていたが、運良くキャンセルの空きがあったらしい。白木造りでLDKほどのスペース、キッチンまでついている。豆がいるとはいえ一人で寝起きにはいささか広すぎるくらいだ。新築あるいはリフォームされたばかりらしく、木の匂いが心地いい。
「今夜はここで泊まりの予定なんだ」
「すごいね、ゴージャス!」
結構したんじゃない、宿泊費? と彩葉が質問したが、えー忘れたなぁと椎名はとぼけた。
ジャケットをハンガーにかけて椎名は、彩葉と拓郎に自分が夕食を作ると宣言した。一泊の荷物は先行してコテージに送っていた。荷からカーキ色のエプロンを取りだし颯爽と巻く。さらに手慣れた手つきで袖をまくった。
「え……ご馳走になっていいんですか」
「手伝うよ」
「いいっていいって。お客さんは座ってて。退屈なら豆をつれて外を散歩してていいから」
椎名は冷蔵庫を開けた。あらかじめ注文しておいた食材がちゃんと収められているのを確認する。なかなかいいぞ、とつぶやいた。ネットで調べた情報以上に整った台所だ。オーブンレンジも限りなく新品に近いし、コンロは四つ口、ホーロー鍋からテフロンフライパンまで一通りそろっている。さすがにフードミルはなかったが、これは事前に送った荷に入れてある。
「よし、じゃ、一時間後に会おう!」
パンと手を叩くと椎名は、キッチンから若いふたりと一匹を追い出した。
きっちり一時間後、食卓についた彩葉と拓郎の前に、つぎつぎと料理がならべられていく。
「これは前菜、水牛ミルクのモッツァレラと完熟トマトのサラダ、プロシュート添えね」
雪のように白くゼリーみたいにぽよぽよと丸い白チーズ、これが五つずつ、スライスしたトマトを座布団みたいにならんでいる。プロシュート(生ハム)はごく薄くスライスされており、白い皿が透けて見えるほどだ。
「コース料理といきたかったけど、それだと僕がテーブルに参加できないから」
と言いながら椎名が置いたのは、野菜たっぷりのスープだった。
「旬の野菜のミネストローネ、白いんげん豆が特徴だよ。コクと滋養がたっぷりあるから成長期の子どもたちにオススメだね」
ブイヨンの色だろうか健康的な茶色のスープに、小さく切ったニンジンやキャベツ、ズッキーニが浮いている。気恥ずかしげに頭をだしているのは白い豆、中央にはもっちりトロトロのチーズ(ストラッチャテッラというそうだ)がかけてあった。
つづいて大皿がふたつ、左右ともにパスタだ。色は白と赤。きれいに対をなしていて目にも楽しい。
「こっちがイワシとイタリアンパセリのパスタ、ちょい辛口だから注意して。そしてこっちはナスとひき肉のボロネーゼ風パスタね。定番のガーリックテイストだよ。パルメザンチーズをたっぷりかけてどうぞ」
パスタの白とパセリの緑、缶詰イワシの黒い色、くわえて唐辛子の赤がアクセント、軽くゴマがあえてある。オリーブオイルの光沢をおび、どこか凜としているのが椎名から見て右の皿だ。一方左の皿は家庭料理の雰囲気というか、やわらかい赤に覆われて肉も茄子もリラックスして見えた。薄切りの茄子はつややかで、ひき肉のからまり具合も絶妙だ。
いよいよ登場メインでござい、そう宣言しつつ椎名が運んできたのは、塊のような肉がどん! と置かれた煮込み料理の皿だった。
「いやあ、一時間って自分で制限つけちゃったから焦ったよ。ぎりぎり完成、いま仕上がったばかりのこちらは、牛ほほ肉の黒胡椒煮込み。マッシュポテトと一緒に食べてね」
重厚な雰囲気ながら肉はやわらかそう。赤身をおびたソースにはきっと、ワインがふんだんにもちいられているのだろう。マッシュポテトはよく練られ濃厚、ほとんどクリームのようだ。
「というわけで私家版イタリアンといったところかな、どうぞ召し上がれ」
しばし拓郎は言葉を失った。ようやくだした言葉は崇拝に似た感嘆だ。
「え……プロですかこのレベル、すごい……!?」
「うちのお父さん凝り性だから」
彩葉はふふと笑い父にも笑顔を向ける。
「でも今日の料理はいつもよりさらに凝ってる。スペシャルだね! ありがとう」
「どういたしまして。じつは、今夜に備えてちょっと煮込みは練習したんだ」
昨夜のディナーではやや失敗したことは秘密である。
「さあ、冷めないうちに召し上がれ」
「はいっ……!」
いただきます、と拓郎は手を合わせた。
「どれも美味しくいです。本当に……!」
夢中になるような料理だった。拓郎の笑みは止まらない。もちろん彩葉も、椎名もだ。床で豆はドッグフードをいただいているが、彼も熱心に口を動かしていた。
モツァレラとトマトの二重奏、プロシュートの口当たりの良さは言うまでもなく、深みのあるミネストローネにも舌鼓を打つ。パスタもすばらしい。ジャストタイミングのアルデンテ、ちょい辛のパスタには意外性があり、ボロネーゼは親しみのある味わいだった。もちろんほほ肉煮込みは最高だ! 口のなかで溶けていくようにやわらかく奥行きのある味わいで、マッシュポテトと一緒にすればいくらでも食べられそうだ。途中で椎名は焼いたバゲットを追加してくれた。そのままバターを塗って食べるだけでなく、ほほ肉のソースをつけてもモツァレラ&トマトを乗せても最高のパフォーマンスを提供してくれる。
椎名は赤ワインの小瓶を開け、拓郎と椎名には炭酸水をふるまった。わざわざシャンパングラスに注いでくれたのが心憎い。
楽しい食事は和気あいあいと終わり、現在は紅茶とともに、椎名手製のローケーキが食卓にのっている。
とろりとココナッツオイルのかかった白くて上品な生ケーキだ。オーブンいらずの冷製、レモンピールが混ぜ込まれ、丁寧に切った夏みかんとナッツが乗せてある。カクテルグラスに盛るとなんとも絵になって、食べるのがもったいないくらいだ。
「ローケーキって、はじめて食べましたけど……とってもおいしいです」
「うん、レアチーズケーキっぽいよね!」
「最近、夏場はよく作ってるよ。簡単なわりにおいしいからね。ココアパウダーをまぶしてもいけるんだ。試してみるかい?」
いち早く食べ終え、彩葉は席を立った。
「私が後片付けをしておくよー!」
いいからという椎名に、せめてそれくらいはさせてよと彩葉は言う。
「あ……俺も……」
「拓郎は終わってないじゃない? ゆっくり食べてよ」
言い残して彩葉は台所に入り、食器を洗いはじめるのである。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
拓郎は座り直した。なんとなく、背筋が伸びる。
期せずして、椎名さんと二人きりだな……。
豆は満腹になったせいか、部屋の隅にうずくまって寝息を立てている。犬なのだが、ちょっと猫っぽい。
彩葉がなんとなく歌っている鼻唄は、ちょうどこの季節向けのサマーソングだ。
何か話したほうがいいのかな?
拓郎は話題を探そうとしたが、その必要はなかった。
「拓郎君は」
先に椎名が口を開いたからだった。
「はい」
「彩葉ちゃんのどこを好きになったの?」
ブふォ!? 拓郎は口にしていた紅茶を吹いてしまう。
「す、すいません……い、いや不意打ちで……」
慌ててテーブルを拭く。ごめんごめんと椎名は笑った。
「急に聞いて驚かせちゃったね。まあ、とくに意図のある質問じゃないから軽く聞かせてよ」
「軽く、ですか……?」
「そうそう、気楽に」
と言われて素直に気楽になれるような質問ではないし、状況でもなかろう。
それでも拓郎はますます背筋をのばして答えるのである。
「そう、ですね。ちょっと意地悪なところもあるけどそれも可愛くて……一緒にいて、楽しいですし、癒されるんです」
誇張も偽りもない気持ちだ。すらっと口にできたことに、拓郎自身少し驚いている。
椎名は満面の笑みを浮かべ好意的に言った。
「ふふっ、二人ともお互いが大好きなんだね。彩葉ちゃんの話を聞いててもわかるよ」
「そう、ですか……」
これで照れるなというほうが無理というものだ。拓郎はうつむき加減で頭をかいた。頬が熱い。
「お父さんとしては、彩葉ちゃんが巣立っていくのは寂しいけど――」
椎名はまっすぐに拓郎を見つめる。拓郎も顔を上げ、彼の眼差しを受け止める。
「君のような優しい青年に愛されてることを嬉しく思う」
拓郎の胸のなかに、カイロを入れたみたいな熱がひろがった。少し、熱すぎるくらいの。
けっして重い口調ではなかった。
でも、重い言葉だと拓郎は思う。
お父さんにとっては、とても大事な娘のはずだ。
だからこその重さを、俺は静かに受け止めたい。
はい、と拓郎は返事した。ずんとした衝撃が胸の内から、爪先にかけて駆け抜けた。放物線を描き飛んできた砲丸を、両手で受け止めたかのように。
「これからも彩葉ちゃんと仲良くしてあげてほしい」
「もちろんです……!」
実時間にして数秒、しかし一時間に匹敵する沈黙を挟んで、
「あ、そうそう」
コロリと椎名は口調を変えて、カラオケでマイクを手渡されたように述べる。
「彩葉ちゃんのお母さんで僕のお嫁さんからの伝言。次は私だ、だってさ」
けれど拓郎はまだ緊張状態だ。真顔のまま即答する。
「挑むところです!」
「いい返事だねえ。楽しみにしておいてよ」
はいと返事して急に心配になり、おそるおそる拓郎は言うのである。
「……あ、いや……また冗談だったりしますか?」
椎名が回答するより先に、
「洗い物終わったよーっ」
彩葉が戻ってきた。
あれ? と彩葉は思った。
お父さんと拓郎、何か会話してたみたい。
なのになぜか、二人ともピタッと会話をやめてしまったようなのだ。同時に彩葉を見て、
「や、やあ早いね」
「あ、ありがとう……」
いささかぎこちなく言うのである。とりわけ拓郎の動きが変だ。いたずらを見つかった子どものように視線が一定しない。小刻みに震えているようでもある。
「拓郎ぷるぷるしてどうしたの?」
「なんでもない、なんでもない……ぞ」
まあいいか。
わざわざ『なんでもない』というところは気になるが、追求するほどの話でもないだろう。ちょうど目が覚めたのか、豆がぱたぱたと足元に寄ってきた。
それより、と提案するのは椎名である。
「写真を撮らないか? 彩葉ちゃんと拓郎君と豆で」
彩葉の母、つまり椎名の妻に見せたいというのだ。
「もちろんいいよ。ねっ、拓郎」
「喜んで……!」
彩葉は豆を抱き上げる。さっと立って拓郎がならんだ。
「ノリノリだね二人とも。いや、お豆もノリノリのようだね」
上機嫌で椎名は荷物をあける。
この日ここまでほぼ完璧だった椎名の一日、しかしここにひとつだけ、小さな失敗があった。
「しまった! 一眼レフ持ってくるの忘れた!!」
仕方なくスマホを持ち出した椎名だが、なんとも無念なのは否めない。
「しくしくしく……せっかくこの日のため新調したのに……」
「ほらお父さん落ち込まないで。そのカメラはハレの日に使えばいいじゃない」
「ハレの日?」
「そ、そうですよ……もっと記念になる日、とか……」
「そうか、それもいいかもねえ」
椎名はぼんやりと想像した。その日を。
彩葉も想像した。
拓郎も。
三人の想像が一致したかどうかは、秘密にしておこう。
<< もどる
1
2
3
4
このページにイラストを設定する
あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
桂木京介です。リクエストにあらためて感謝申し上げます!
せっかくのプライベートシナリオですので、話のつづきはコメント欄で行いたいと思います。
文字数限界まで書いていますので、どうぞご確認ください。
↑ページトップに戻る
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
初顔合わせのサマーソング
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSSS(600)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
2人
参加キャラクター数
2人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年02月18日
参加申し込みの期限
2022年02月25日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年02月25日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!