其れは彼と彼女で作る、特別なとある一日。｜リアクション

其れは彼と彼女で作る、特別なとある一日。

　後片付けまでをきっちり終えて、修とあおいは作業部屋を後にした。そうして制作が終わった事と、諸々を貸してもらったお礼を改めて伊都子さんに伝えた際に、出来上がった2匹の銀猫を見せると、とっても可愛いわ、と手放しで褒め、喜んでくれて。
　それから2人でカフェスペースに移動して、話すのはやっぱり今日の制作の事。

「お疲れさま！」
「俺達、頑張ったよな」
「うん、頑張ったよね！　楽しかった！」

　お茶で乾杯としゃれこんで、焼き菓子をつまみながらそう、笑い合う。傍らに置いた銀猫を見ながらの話題はまるで、汲んでも尽きせぬ泉のようにとめどなく溢れ、終わる事がない。
　案外こねるのに力が要ったこと、モールドから出すときに少し欠けてしまって青くなったこと、伊都子さんにその都度アドバイスをもらいながらなんとか修正したこと。それから、それから――
　その話が、ふ、と途切れた。それを良いタイミングだと、修は思い出したように――そう見えるように装って、「そうだ、あおい」と声を上げる。

「え？」
「アクセサリーにはこれが要ると思うんだ」

　瞬いてこてんと首を傾げた、あおいにそう言いながら修が取り出したのは、簡素ながら可愛らしいラッピングが施された、そう大きくはない包みだった。それを「はい」と手渡した修に、手渡されたあおいは受け取ったものの、きょと、とまた目を瞬かせる。
　そんなあおいに「開けてみて」と笑いかけると、うん、と不思議そうな顔のまま彼女がラッピングに手をかけた。ゆっくり丁寧に、慎重とも言える手つきでラッピングを開いていくあおいを、ドキドキしながら見守って。
　永遠にも感じられる数瞬の後、ラッピングの中から姿を現した『ソレ』にあおいが軽く目を見張った。――それはサプライズで用意した、修お手製のジュエリーポーチだ。
　巻きタイプの小型財布のような形をした布製のポーチは、今日作ったアクセサリーのためだけの物ではない。あおいが持っている他のアクセサリーも入れられて、なおかつ持ち運びにも良い感じ……になるように頑張った一品である。
　目を丸くしてポーチを見つめていたあおいが、はっ、と我に返って顔を上げ、修を真っ直ぐに見つめた。その瞳に確かに映る自分の姿に、眩暈にも似た喜びを噛み締めながら、修は彼女に微笑みかける。

「ハッピーバースデイ、あおい」
「――ありがとう、修くん！！」

　そうして告げた、心からの祝福の言葉にあおいは、咲き綻ぶような笑みを浮かべた。その瞳が少し潤んでいるように見えるのは――修の思い込みではない、と思いたい。
　嗚呼、と愛しく目を細めてその笑みを見つめる。愛しい人――恋しい人。その、眩しい笑みが今はただ自分だけに向けられている、その幸い。
　彼女の生まれた日を、生まれてくれたその事実を、何度でも祝おう。何度も、何度でも心を込めて、心から。
　――そうしてこんな風に、輝く笑顔で『今日は最高の誕生日だ』と笑ってくれたなら、それに勝る幸せはきっと、この世のどこを探しても見つけられないだろう。だから、

（俺は幸せだ）

　心の底からしみじみと、その想いを噛み締めて修は「こちらこそ」と笑ってみせる。それは――かけがえのない、とある夏の日。

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あとがき

担当マスター：蓮華・水無月
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いつもお世話になっております、蓮華・水無月と申します。
この度はご指名頂きまして、本当にありがとうございました。

最愛の人とハンドメイドにいそしむ物語、いかがでしたでしょうか。
作品作りやその相談に盛り上がるご様子を楽しんで頂けたらと、頑張って執筆させて頂きました。
シルバークレイ、手作りでありながら銀細工のアクセサリーが作れるのが、とても魅力的ですよね。
お値段もそこまで高くないのが――いえ、やっぱり1パックに入ってる銀粘土の量を考えると高いですかね……（遠い目

お届けさせて頂きましたリアクションが、八神さまに楽しんで頂ける物であれば、心から嬉しく思います。
またのご縁がございましたら、どうぞ宜しくお願いいたします（深々と

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