【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞

●試験の思い出と夏休み

「テスト終わったー！　やっと猫さんをたっぷり愛でられる……！」

　恵御納夏朝は喜びの声をあげた。その隣で恵御納夏夜も試験終了に安堵しているように見える。試験が無事終了したということで、２人で猫たくさんのスポットを訪れて、猫たちを愛でたりもふもふしながら打ち上げパーティのようなことをしてみようと考えた。
　学校からの帰り道にお菓子や飲み物を少し買って、猫たちのいるところへ向かう。夏朝たちが近づいても猫たちは抵抗しない。まるで夏朝たちにお疲れ様と言っているようだった。もふもふし終えると、夏朝は打ち上げできそうな場所を探す。

「どこか適当なところに座ろうか」
「そうだね。日陰がいいかな」　
「うん。夏生まれだけど、暑いのは苦手……」
「僕もだ……」
「猫さんたちも涼しいところの方が好き、だよね？」

　夏朝はそう猫たちに問いかける。７月とはいえ、暑さはなかなか侮れない。手頃な日陰を見つけると、２人は猫たちと一緒にそこへ移動した。

「じゃあ改めて……おつかれさま！」
「お疲れ様」

　２人は買ってきた飲み物を軽く当てる。

「今回も……大変だったね……」
「本当に……」

　思い出すと、今回の試験も色々あった。
　内容が難しいだけならこんな表情を浮かべることは無かっただろう。１日目からクーラーが不調で３日目には完全に止まってしまった。おかげで教室の暑さが尋常ではなかった。しかも、それだけでは終わらなかった。

「幽霊さんは予想してなかったかな……」
「今後、部外者の割り込みは勘弁願いたいものだね……」

　受験幽霊や色情霊が現れたことで教室中で色々なハプニングが起こっていた。エアコンの件と相まって、大変な４日間だった。それを思い出しつつ、夏夜は話を続ける。

「幽霊は普通の人も多い状態だと気を付けようがないからな……霊界の学校があるならそっちに通ってほしいところだ」
「……霊界にも学校やテストはあるのかな。幽霊さんたちも良い点を取れるといいけど」

　２人とも地面を思わず見つめてしまう。振り返ると、本当に濃い４日間だった。しかし今は、その４日間が終わったことに対する打ち上げ。気持ちを切り替えようとお菓子の袋を開ける。

「返却されるまでドキドキだったけど、テストの点数、お互いに良くて良かった！　ありがとう、夏夜ちゃん！」
「うん、夏朝も僕も点数良くてほっとしてる。僕の点の良さは、分離以前に勉強頑張ってた夏朝の分も含まれてるけどね」
「でも、分離後の記憶や勉強具合は各自の物だから、夏夜ちゃんの高得点は夏夜ちゃん自身の頑張りだよ！」
「……そう言ってもらえると嬉しい。ありがとう、夏朝」

　それから猫たちと戯れたり、おすすめのお菓子や猫グッズの話などで盛り上がる。

「テストも終わったし、これから夏休み……の前に終業式、だね」
「そうか、終業式があったね」

　楽しい夏休みが２人を待っている。そう思うと同時に、これまで体験した災難も蘇る。

「霊界絡みも色々あるのかな」
「大きなことが起こる可能性はある。とはいえ、善良な幽霊やあやかしならまだましな方か」

　今回の試験で出会った幽霊たちは害があったかと考えると、そうとも言い切れない。確かに試験を妨害されたけれど、悪意や敵意があったわけではないから。　

「害のない幽霊さんやあやかしさん達はいいけど、厄介な敵とかが来ないと良いなぁ……」

　夏朝はどこか遠くを見つめる。つられるように夏夜も同じほうを見る。そして猫たちまでも同じほうを見始めた。それを見ていたら２人ともなんだか笑ってしまった。

「あ、夏夜ちゃん。帰りは僕の部屋に寄ってほしいな」
「夏朝の部屋に……うん、いいよ」
「一緒にのんびりしたいんだ」

　それは夏夜だけでなく、お留守番なぬいぐるみや内緒で飼っている猫なども含めている。

「夏休みは楽しみだけど、宿題もあるんだろうなあ」
「夏休みの宿題……寝子高のは初めて挑む事になるかな」
「でも勉強や宿題も頑張って猫さん愛でて、夏夜ちゃんや皆と楽しく過ごして……フツウを死守して、この１年を楽しむぞー！　おー！」
「そうだね、この１年……寝子高生活も寝子島生活も色々楽しもう」

　夏夜も猫を愛で、夏朝たちと仲良く時を過ごしたい。
　空も暗くなってきたところで、２人は夏朝の住む桜花寮に向かった。

このページにイラストを設定する