【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞｜リアクション

【期末テスト】赤点？満点？？熱風、四日間の死線＜物語編＞

●寒暖の緩急

　期末試験初日。
　魚塚源三は教室でため息を吐く。

「はぁ……めんどくせぇけど赤点とると母ちゃんがうるせーからな」

　寝子島高校の赤点は３０点以下。
　見た目は勉強が苦手そうに見える彼だが、実は理数系の科目に関しては意外にも成績が良い。しかし英語と国語は不安がぬぐえない。

「まぁここまできたら『なるようになれ』だ」

　とにかく３０点以下にならなければいい。
　チャイムが鳴り、問題用紙と解答用紙が配られる。

（さて、さっそく不安科目の英語だな……えっと確かこの単語は……）

　ペンの走る音が教室中に聞こえる。皆が試験に取り組んでいる雰囲気が教室を包む。独特の緊張感が漂うなか、もわっとした空気を感じる。

（……あっちぃな……エアコンちゃんと効いてんのか？）
　
　今は７月。夏の風が暑さを連れてやってきている。けれどここはエアコンのおかげでそれを凌げるはず。彼はそう思っていたのだが、冷風が流れている気がしない。

（どうなってんだ？）

　他の生徒も疑問に思っている様子だった。どうやら現在、クーラーは効いているものの、たまに故障するらしい。

（エアコンが故障気味！？　この暑いなかで解けっていうのか！？　くそ……でもやるしかねぇ……！）

　源三は気持ちを切り替えて、プリントに視線を戻す。ただでさえ苦手な英語は集中して取り組みたい。そしてせめて赤点を回避したい。すると冷えた風が彼の頬を撫でる。

（お、涼しくなってきた……？）

　クーラーの調子が戻って来たのか、風をどんどん送り始めた。これは彼にとって精神的な追い風になるかもしれない。

（よし！　やるぞ！）

　冴えた気がする頭を総動員して問題に向かう。なおスラスラ解けるようになったわけではない。それでも握ったペンを必死に動かす。しかしふとその手が止まった。

（……今度はさみぃ！？）

　先ほど教室を冷やし始めた心地よい風が、今度は生徒たちに牙をむく。涼しいを通り越して寒くなってきた。風が直に当たっている生徒はかなり悲惨な状況だろう。

（どうなってんだよチクショウ！　うがー！　問題もよくわかんねーし！）

　源三は文字通り頭を抱えた。

（英語はもうヤマカンで適当に書いてやりすごすしかねぇ！　後は神頼みだぜ！）

　選択問題はとりあえず埋めて、単語問題は知ってるなかからそれっぽいものを書き込んだ。終了のチャイムと同時に最後まで埋めきった。合っているかどうか、源三にはまるで分からなかった。まだ残っている科目に不安を残しつつ、源三は英語の試験を終えた。

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