AIを語ろう！｜リアクション

AIを語ろう！

Dear 乙女ゲーム『スティルラヴ』，

　手紙かぁ。乙女ゲームでは良くある手段だよね。お誘いのお手紙とか！　……まさか乙女ゲーム宛に出すとは思わなかったけど☆
　私、羽生碧南のこの熱い想いをどこまで書ききれるか分からないけど、頑張るね！

　えーと、乙女ゲーム『スティルラヴ』……通称『スティラヴ』の大好きな所は、攻略対象がとっても多彩な所！　幼馴染からイケメン青年、年下Boyとよりどりみどり15人。その上全員コンプリートしたら隠しキャラ攻略ルートも出現するんだよね。どのキャラも魅力的すぎるのに、その上隠しキャラとか……は～、幸せ！

　隠しキャラだけでなく、コンプリ後にステータス次第でまた様々なルートに進めるのも嬉しいの。新たなエピソードを知って、また胸がきゅんきゅんしちゃったりとか、もう何度楽しめばいいの？！　ってくらいに丁寧で深い作り。『スティラヴ』最高！

　節目節目で出てくるミニゲームが意外に難易度が高い所も、やりごたえあり。「ミニゲームなんて難易度優しめじゃーん、平気平気！」なんて思ってると痛い目にあう。自分のステイタスを上げるため、ひいては攻略対象とらぶらぶするために、ついつい頑張っちゃんだよね～。

　攻略対象の中で私の一押しは、「小早川環生」！　主人公が通う高校の生徒会長で、文武両道のイケメン。父親が検事のせいか、少し堅物っぽいところが玉に瑕だけど、お話が進むとどんどん情熱的な溺愛王子になっていくの。これがもうたまらなくって……！　ギャップ！　萌え！！！

　もう『スティラヴ』の事は隅から隅まで知り尽くしているよね。何度もコンプリしてるから。
　それでも、飽きない。何度でも、何度でも、あなたの世界に飛び込みたくなる。―――こんな凄いAI、ないよね？！？
　だから、ついつい色々『スティラヴ』関連で動いちゃう。二次界隈ではイラスト描きまくって（もちろん小早川×主人公！）、ねこったーに投稿。プレイの実況中継もしてるんだ。すっごく、盛り上がるよ～！

　１人でも多くの乙女が『スティラヴ』でときめいてくれたら嬉しいな。
　『スティラヴ』、最高！　ずっとずっと、AIしてる！！

With love，
碧南

＊＊＊＊＊

　それは、運命だったのかもしれない。

　羽生碧南は何の気なしにゲームショップに立ち寄った。特に方向も定めずぶらぶらと棚を冷かすのは、割と時間がある……要は暇だからであろう。碧南は様々なゲームのパッケージを見ながら、このゲームはどんな世界が広がっているのだろう等とつらつら想像していた。その作業は結構楽しく、それで時間が過ぎていくのはお得な気がする。
（お金かからないしねー）
　ウインドウショッピングならぬパケショッピング。そんな気儘な碧南の暇つぶしタイムに、突然眩しい光が差し込んだ。

「え、ちょっと待って……何、これ……」
　碧南は戸惑いながら、キラキラした光を放つ（ように彼女には見える）それに、手を差し伸べた。
　パッケージからはゲーム内容は、よく分からなかった。たくさんのイケメンの男の子達が、１人の少女を中心に、笑ったり、こちらを熱く見つめているイラストだ。
「何か……これ……」
　惹かれる。碧南は直感的にそう感じた。
　内容は、分からない。けれども、きっと私にとって大事なゲームになるに違いない。―――私の野性の勘がそう言っている！
　ガオオッ！
　碧南の心の猛獣が吠えまくる。彼女は大柄ながらほんわかした見た目の少女だが、割と本能で動く部分があるようだ。

「うん、買っちゃお！」
　碧南は迷いもなくお財布を覗き中身を確認すると、そのゲーム……『スティルラヴ』を握りしめ、レジへと向かった。

　軽やかに歩く無垢な碧南。しかしその１歩１歩が、少しずつぬかるんだ地面を歩いているように見える。
　彼女は、気付かない。もう、沼に足を踏み入れてしまったことを。
　碧南はこの夜ゲームで完徹をする。そして朝陽を血走った眼で迎える頃、彼女はもう頭の先までどっぷり沼にはまり込んでしまうのだ。

　―――ようこそ。この底なしの乙女ゲー沼に。

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