AIを語ろう！｜リアクション

AIを語ろう！

Dear　お酒，

　僕、鏨紫のAIするものは……そうだな、語るとなるとお酒、かな。家族もとても愛しているが、大所帯ゆえ些か面映ゆい。
　―――うん、ここは大好きなお酒を語らせてもらおうか。

　お酒のAIするところか。そうだねぇ、色々あるけれど……作り手の想いや技術がたくさん、たくさん込められているところかな。
　米作りから始まり、お酒を造るには様々な工程があり、どれも気が抜けず、苦労も伴うだろう。けれども、そこを恐れず、経験や創意工夫が加わる事で、美味しいお酒が出来上がる。作り手の情熱や想いがなくちゃ、こうはいかないんだ。
　僕も樵や大工の棟梁なんかやっているからよく分かる。山に分け入り、梁や柱に適した大きな木々を、時機を見て切り倒す。運んで、加工して、木組みをして。どの工程だって気が抜けない。建てる場所や木材によって、工法もどう変えるか頭を悩ます。
　生みの苦しみと、そして、楽しみ。―――何かお酒造りと似通う所があるとは思わないかい？　
　だからこそ、僕達は手を抜かず屋敷を建てる。そしてそれは手を入れ続ければ何百年も持つし、丹精込めて造られたお酒の味は、深みがあって美味いんだ。

　それに、酒精で体が温まっている方が、普段よりも心穏やかに物腰が整うのもいいね。……逆に荒くなる者もいるようだけど。
　どうなんだろう。酒が飲む者の本性を暴くというなら、素面の時より穏やかなのが僕の本性、ということで良いのではないのかな。棟梁としてそれなりの気を張ろうとすると、どうしても剣呑さと優しさを天秤に掛けざるを得ない所がある。そのしがらみをお酒は取っ払ってくれるんだ。
　だから、酒宴の席は心から楽しみたいね。皆が心を緩め、本性を出し合う。実は意外に付き合いやすい奴だったり、泣き上戸だったり。本当に面白いよ。

　お酒との今後の付き合い方……これまで通り、程よく付き合っていくさ。溺れず涸らさず、張る時は素面、緩める時は飲む。
　と、偉そうに言っているけど、御付きの者達には幾分だらしない方と見えてか、よく叱られているよ。
　……でも、それがまた嬉しいということは、ここだけの話にしておこうかな。

　棟梁として知らず知らずに気を張る僕を、AIするお酒はふうわりと休ませてくれる。
　これからも、末永くよろしく頼むよ。

With love，
紫

＊＊＊＊＊

　一家の棟梁である鏨紫は、生まれてこの方お酒は欠かしたことがない。なぜなら、鬼だからだ。
　ひとは『命の水』なんて例える輩もいるらしいが、鬼にとっての水は、酒。そう教わってきたのだ。

……だから、切らさないのは当たり前だろう？

　屋敷で酔っ払い、紫はしたり顔で御付きの者達に言う。すると、
「……限度というものを覚えてください！」
　そんな風に叱られながら、あれやこれやと世話を焼かれる。
　いつもの、屋敷での紫の光景だ。

　紫は、お酒が大好きなのだ。
　こんな風に心を緩めて酔っぱらえるのは、大好きな家族達が周囲にいてくれるから。
　こんな美味しいお酒が飲めて、心許せる者達に囲まれ、楽しくない訳がない。
　それに飲む度に気付かせてくれる、お酒が大好きなのだ。

　だから紫は今日も、朗らかに笑い、小言を受け流しながら酒を飲む。
　家族の幸せを願いながら。

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