蝉羽月に衣替え｜リアクション

蝉羽月に衣替え

クマ達と一緒に

●制服リメイク

　八神修と七夜あおいは桜花寮の一角に集まっていた。その手には１年生のときに来ていた制服がある。

「なんだか懐かしいな」
「そうだね」

　２人はお互いを見ながらほほ笑んだ。ここに集まったきっかけは、衣替えだった。修が自宅の衣替えをしていた時に、偶然１年生のときに着ていた制服を見つけた。

（卒業したら制服を着ることも無いんだろうなぁ）

　そう思うと、どこか寂しい気持ちが沸いてきた。
　そこであおいにこのことを話したところ、彼女も同じような状況だった。どうしようかと２人で考えた結果、これらをリメイクしようとなり現在に至る。

「まずはクマ太郎たちの制服を作ろう」

　修の視線の先にはあおいが持ってきた２匹のクマのぬいぐるみ。このクマたちは修がバレンタインデーとホワイトデーにそれぞれ贈ったものだ。２匹が対になっているので、制服もそれを意識したい。修は小型ミシンを開くと、針に糸を通して準備を整える。傍らには裁縫に関する本と、ネット検索できるようにスマホも用意する。
　服の採寸方法は人が着ることを想定しているので、クマたちに着せるには少し工夫が要る。

「流石に一発ですんなりとは作れないか……」
「なかなか難しいね……」

　大きめに型紙を作って、少しずつ切って調整する。なんとか型紙を作ったものの、これはまだ作業の序盤。むしろここからが本番かもしれない。
　型紙をもとに制服から生地を作る。しかし布というのは想像以上に扱いにくい。歪んだり曲がったりしないように気を付けながら、慎重に作業を進める。

（こういう作業を普段からしている人たちはすごいな……）

　どうにか生地を切り出すと修は小さく息を吐いた。無意識に息を止めてしまっていたようだ。それから、あおいと一緒に縫う作業を進める。最後まで気を抜くことはできない。本やスマホを何度も見ながら、ようやく形になった。それをさっそくクマたちに着せる。

「可愛すぎか！」
「かわいい！」

　思わず声にでる２人。

「写真、いい？」
「うん！」

　はじめは２匹のツーショットをデジカメで撮り、次にあおいに抱えて貰った状態も写真に収める。

「これでクマたちがずっと使ってくれるね」
「そうだね」

　あおいは嬉しそうにクマたちを抱える。その様子に修も嬉しそうだ。制服の他にもブラウスやシャツもリメイクするために持ってきている。これらは折り畳みのエコバッグにする。採寸して、型紙を作って、生地を縫い合わせる。先ほどクマたちの制服を作った経験が早くも活きてくる。
　その作業をしながら、修がふと話し出す。

「俺は、作ったり育てたりっていうのに敬意を持ってるんだ。だから料理を作るあおいを凄いと思ってる」
「ありがとう。な、なんか恥ずかしいな……」

　そう言いつつ出来上がったエコバッグを受け取る。修は一緒に作れたことが嬉しかった。
　できあがったものを改めて眺める２人。制服などが作られたことに対する感謝とそこから新しいものを作れた喜びを２人で分かち合った。

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