ニセ校長、現る？！｜リアクション

ニセ校長、現る？！

〇正体は……？

　キーンコーンカーンコーン。

　今日の授業が終わり、ねこったーをチェックした桜は、教室に現れたという尻尾の生えた校長についての書き込みを発見した。
（まさか物理的にシッポを出すなんて！）
「校長先生だ」
　誰かの声がして、はじかれたように桜は立ち上がった。
　廊下へ飛び出した桜の目に、ふらふら歩く校長の姿が映った。
『校長発見。中庭まで誘導します』
　急いでねこったーに書き込みし、校長に声をかける。

「校長先生、ちょっと中庭まで来てください」
　翠響は校庭を歩いている校長を見かけ、急いで走り寄って誘導することにした。
　大人しくついてきた校長と共に中庭に入る。

　ねこったーの#校長目撃　のタグを追い、碧南は中庭に向かった。
「わっ……？」
　そこには、校長がいた。
　１人、２人、３人……ねこったーを見た生徒たちがあちこちから校長を連れてきている。
「えっ……どういうことなの？　これ、ファンタジーの世界？」　
　たまたま通りかかった想花も目を丸くする。

　翠響は声を張り上げた。
「正体を現しなさい！　本物の校長先生はどの人？　なんでこんなことをしたの？」
　一瞬の静寂の後、翠響が連れてきた校長が手を上げた。
「私が本物だよ。なんでこんなことをしたのか、私も聞きたいな」
「まあ、動機はきっとしょうもないことなんだろうけど、これだけ自分のそっくりさんを集めてイタズラを行うその根性だけは認めていいかも……え？　校長先生のイタズラじゃないの？　それじゃあ……？」
　てっきり校長のイタズラだと思い込んでいた翠響は混乱するが。

　ポン、と一人の校長が手を打った。
「なるほど、そっくりさん！　それいいですなあ」
　その校長が目を見開き、小さな声で話し始めた。
「お騒がせして申し訳ありません。ここだけの話、私は霊界のあやかし学校の校長なのですが、人間界の学校を視察させてもらいに来ました。正面切ってお願いするわけにもいかないので、内緒で。校長先生の姿になれば怪しまれずに校内を回れると考えたのですが……」
　そして他の校長たちを見回す。
（あれ……？）
　よく見れば他の校長たちからは尻尾や耳が飛び出していることに、想花は気づいた。
「困ったことに、生徒たちの何人かがついてきてしまったのです。たまたま変身の授業で校長先生をお題に使わせていただいたばかりで、みなそこそこ化けられるのです。みんな、お詫びしなさい」
　あっけらかんと話すあやかし学校の校長に、あっけにとられる生徒たち。
　他の校長先生たちは小さな声で、「ごめんなさい……」と頭を下げた。
「今の話は忘れてください。いいアイディアを聞いたことですし」
　そんなことを言い出したあやかし校長は、突然目を見開き、急に声色を切り替えて話しだした。
「寝子高の校長先生はちょっとしたイタズラで、そっくりさんを集めて校内を見回りさせました。生徒たちに考える力を養ってほしかったのです」
　よく響く不思議な声を聞いた生徒たちの意識には、その言葉が焼き付いて。
「なんだ、イタズラだったのか……」
　そして校長先生たちは、いつの間にか消え失せていた。
　本物の一人を残して。
「そうか、私はそんなイタズラをしていたのか……？　まあいいか」
　のほほんとそんなことをつぶやく雨宮校長を見て、桜は脱力した。
「とりあえず解決したのよね……？」　
　そして#校長目撃タグを穏便な書き込みで締めることとしたのである。
『校長同時出現は、校長先生のイタズラということで解決しました。ご協力ありがとうございました』

　
　そんな騒ぎを知らず、軽音部の練習にいそしんでいた遠海。
　昼の出来事も忘れていたが、練習終了後に部員たちの話が聞こえてきた。
「校長先生が同時多発出現したんだって？」
「ああ、あれはそっくりさんなんだって。校長先生のイタズラって聞いたよ」
「……ふうん、そんなことがあったんだ」
　遠海はつぶやく。
　食べることと音楽にしか興味のない女子の正直な感想であった。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
ニセ校長事件は無事解決しました。

あやかし学校の校長の能力は、自分の言葉を聞いた人の意識に焼き付けるというもので、忘れさせる能力はありません。
なので、真相を覚えていることは可能です。
霊界にあるあやかし学校が、今後出てくることもあるかもしれませんね。

それでは、またご縁がありましたらご参加お待ちしております。

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