ニセ校長、現る？！｜リアクション

ニセ校長、現る？！

　そのころ桜は、ねこったーでの目撃証言を探し、その情報を発信したアカウントに片っ端から質問していた。
「それは本当に校長先生でしたか？　それともよく似たそっくりさんなのか、違和感など感じた点があれば教えてください……っと」
　ＤＭではなくてあえて公開にしたのは、多くの生徒に見てもらって情報共有し、そこからさらなる情報を提供してもらえたらいいかな、と思ってのことだ。
　少しずつ返事が返ってくる。
『見間違いかもしれないけど……校長先生の頭にケモミミがついてたような？』
『俺が見た校長は顔を撫でてた。……なんというか、猫が顔洗うようなポーズ？』
　返事を読みながら桜は考え込む。
（なんか、獣っぽい……？）

　一方仲間を集めた翠響は、さっそくＮＹＡＩＮＥグループに作戦を伝達する。
『校長先生を見つけたら、中庭へ校長先生たち（？）を誘導して。校長先生たちを鉢合わせさせて、並べて比較しましょう』
　これで本物かそっくりさんかの見分けがつくはずだ。
　そして自分も校長先生を探しに出かけた。

「校長先生があちこちで出没？」
　月原想花は首を傾げる。
「この学校に入学して２カ月たつけど、いろんなことが起きているね。ぼくの想像力なんて及びもつかないことばかり」
　……そんな風に思うのは、この前追試で散々な目に遭いフジコ先生との犬小屋補習が確定してしまったためだ。
　気分はすっかりどんより落ち込んでいる。
（永遠の闇に閉ざされたダークファンタジーの異世界の非力な住民でも、もう少しは明るいよ……）
　なんて自嘲も浮かぶ。

（それにしても校長先生が同時多発的に出没、ってねえ）
　想花の、いつものファンタジーな空想癖が始まった。
（……王国の高等魔法学院だったら、生徒を試すために時折こんな風に抜き打ちテスト的に校内で怪事件を起こって……学院長の高位魔術師の仕業なのかな？　生徒たちが、どのようにして知力と魔力を駆使して解決にあたるかテストしてるんだ……）
　といったシチュエーションが浮かんでくる。
（でもそれだけじゃ終わらない。そんな状況を利用して、敵対する帝国が将来の王国を担う若き魔術師見習いを抹殺しようとするんだ。送り込んだ間諜が暗躍して、さらにそこに王国内の不穏分子も絡んできて……）
　と、想花の空想は広がるばかりだ。
（今書いてる小説には使うのは無理だけど、別の作品に使えるよね……）
　などと思っているうちに。
「ニャー」
　猫の声に顔を上げると、そこには。
「……校長先生？」
　目の前には、猫じゃらしで猫と遊ぶ校長先生らしき人の姿があった。
（……本物？）
　思わずドキッとしてしまう。
　校長先生は、黙って想花に別な猫じゃらしを手渡してきた。
「えっ？　……僕に？」
　校長先生は無言のままニコニコしている。
（なんでこうなったんだろ？）
　断ることもできず……結局、校長先生と猫を可愛がることになった想花だった。

「あっ、校長先生！」
　その様子を見た翠響が声をかける。
「中庭に行きましょう、猫がいっぱいいますよ」
　キーンコーンカーンコーン。
　しかしその時チャイムが鳴り。
　校長先生（？）は、翠響に答えず走り去ってしまった。

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